店と客が痛みを分かち合う経済再開

 対人距離の確保、マスクの着用、検温、手洗いと消毒を習慣にしつつ経済活動を再開したローマだが、観光客はまだ少ない。イタリアが国境を解放したとはいえ、他のEU圏内の国も同じように渡航を許可しているわけではないので、実際にイタリアに入国している人の数は限られる。まして観光目的で入国している旅行者はほんの一握りだろう。ローマではコロッセオやパンテオンなどの遺跡も既に観光客を受けいれているが、今は外国人ではなくイタリア人の観光客がほとんどだ。むしろ、「今まで混雑してて入れなかったローマの観光名所を見たい」と、ローマ市民が地元の観光をしている光景が頻繁に見られる。もともと郷土愛が強いイタリア人だが、ロックダウン解除後は地元経済の回復に少しでも貢献しようと、身近な飲食店や商店、観光名所などで消費する人が増えている。私の周りでも、外出が自由になった今、朝の一杯のカフェをあえて近所のバールで飲むというお年寄りや、家の隣のレストランまでわざわざパスタを食べに行くという人がいるが、こうした微々たる消費であっても店にとっては心強い支援となっているようだ。
 ローマ市の営業再開に関する規定では、旧市街の小売店は業種によって時間差の営業時間を設けることになっている。これは店員の出勤時間をずらして交通機関のラッシュを避けること、来店する客の集中を避けることを目的としている。どの店も店頭には消毒ジェルが置かれ、店内の床には2mごとにテープが貼られている。店頭で検温してから客を店内に誘導している店もある。利用する客のルールとしては、入店の前にマスクを着けること、素手で商品に触れないことなどが義務付けられていて、売る側も買う側も責任を持って行動することが最低限のマナーとなった。
 制限解除後の商店街を歩いた時、営業を再開できた店もあれば閉店に追い込まれた店もあることを知った。住宅街にある自宅付近の商店街は99%再開できたようだが、開いた途端に「大売り出し」の看板が目を引くようになった。テレビでも「今がお買い得!」という商品CMがバンバン流れている。顧客の呼び戻しと消費促進のために商店も企業も軒並み大セールを開始したようだ。ロックダウン中に収入が激減している人も多い中、消費を促進していくのは容易なことではないが、お金は回さなければ最後は皆で共倒れになってしまう。売る方も買う方も痛みを伴う経済活動だが、一人ひとりができる範囲で消費していかなければ回復も望めない。
 こうした状況を見て、政府は再始動のための新たな緊急支援策を追加し、経済的に困難な状況にある家庭の支援を目的とした緊急所得の配給と、1億4千万ユーロの賃貸住宅支援を発表した。オンラインで申請でき、可能な限り速やかに必要な市民の元へ支給することを目指している。

 

ローマの市バス車内はほとんどが着席不可。公共交通機関は混雑を避けるための時差利用を呼びかけている。メトロやバスは乗車率を減らすため本数を増やして運行している。
商店の入り口には入店のためのルールが表示されている。マスク着用はどの店も義務付けているので外出の際にはマスクと消毒ジェルを持ち歩くのが常識となった(上)。客との接触が多く、かつ長時間滞在する美容院は商店よりもさらに規則が厳格。道具の徹底消毒、客との接触を極力避けるなどスタッフの苦労は多い。レジ前には透明な仕切りまで作られていた(中)。 アパレル関係などは春物商品の在庫一掃だけでなく、夏向け商品も50〜70%オフで売り出すという特売セールを実施し、顧客の呼び戻しに苦労している。特売セールは夏中続く予定(下)。