文/チョン・ウンスク
■日本から聞こえる「韓国の飲み屋街恋し」の声
私の仕事の性格上、日本の読者や知り合いはみな旅と飲み歩きが好きなので、メールやSNSで嘆きのメッセージがたくさん寄せられる。
数日前にTwitterに上げた鍾路3街駅3~6番出口の屋台の写真(下)に多くの反応(アップから3時間で1万ビュー超え)があったのもその表れだろう。

今の日本で韓国の飲み物や食べ物を入手したり再現したりするのは難しくない。しかし、私の読者が重視する風情やサラムネムセ(人の匂い、生活感、活気)はやはり現地でないと味わいにくい。

上の写真のような屋台街の代理満足を得られる日本の繁華街を挙げるとしたら、東京なら浅草の通称「ホッピー通り」(伝法院の西側のモツ煮込み屋通り)、大阪なら通称「裏天満」(環状線天満駅北側の飲み屋街)ではないだろうか。
浅草のホッピー通りは「あそこは観光酒場だから」と敬遠する人がいるかもしれないが、飲み屋ばかりが20軒も連なり、どの店も通りに向かって開放されているという場所は日本でもなかなかないと思う。


しかも、あまり知られていないが、この通りは済州出身の在日同胞の店が今も多く、ちょっとしたコリアンタウンなのである。10年ほど前まではもつ焼き屋の並びに、生地を意味する「옷감」というハングル看板を掲げる店が確認できた。
話し好きの主人の店に当たれば、“リトル済州”が形成された歴史を教えてもらえるかもしれない。
裏天満のほうは2年前の夏、大阪でトークイベントがあったときに初めて訪れた。ビールケースを椅子代わりにして店先で飲ませる大衆的な店もあれば、酒樽をテーブル代わりにしたおしゃれな立ち飲み屋もあり、とても楽しかった。東京の西荻窪駅南側の飲み屋街をスケールアップしたようなところと言えば、関東の人でもイメージしやすいだろうか。その飲み屋の数の多さと路上飲みを楽しむ様子に、楽園洞や益善洞の賑わいがダブって見えた。


東京には新大久保、大阪には鶴橋という大規模なコリアンタウンがあるのだが、韓国人である私の目には、浅草や天満の繁華街のほうにより韓国的なものを感じてしまう。みなさんも海外渡航解禁を待ちながら、もう一度、足元を見つめなおしてみてはいかがだろうか?
(つづく)
2020.3.2「韓国の旅と酒場とグルメ横丁」
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韓国最大の財閥企業サムスングループの二代目会長、故・李健煕(イ・ゴンヒ、昨年10月に死去)の発言、語録をまとめた書籍『李健煕の言葉(原題)』(韓国、スターブックス社刊)を、チョン・ウンスクが日本語版として翻訳、刊行したものです。
