文・写真/山本益博

 

■野々市「すし処 めくみ」と金沢「レ・トネル ぶどうの木」に夫婦で

 金沢の隣町野々市市に評判高い屋があるというのは、かなり以前から知っていました。その名を「すし処めくみ」といいます。ご主人の山口尚享(たかよし)さんが、毎日、石川ばかりかその先の富山の新湊まで魚を求めて出かけてゆき、類稀なる美味しい鮨を握るとの噂でした。 

 

 2016年の「ミシュラン石川・富山」特別版で、鮨屋として北陸唯一の2つ星に輝くと、瞬く間に予約の取れない店になってしまいました。私は、「江戸前」の握り鮨は鮨種の魚貝も大事ですが、それ以上に酢飯が大切と思うので、あまりに皆さんが「めくみ」の魚ばかりを褒め上げるため、出かけることを渋っていたこともあり、これまで足を向ける機会を逸していました。

 

 今年になって、5年ぶりに「ミシュラン石川・富山」特別版がでて、私ども夫婦が以前より応援していた金沢「レ・トネルぶどうの木」が2つ星に輝きました。お祝いかたがた久しぶりに出かけることにした際、運よく「すし処めくみ」の予約が取れました。予約時間は、夜の8時30分。金沢の市内から車で30分ほど、周りには飲食店など1軒もない、住宅地にのれんを掲げていました。

 

 カウンター席7席、夜のみ2回転で、7人の客に山口さん一人が鮨を握っていきます。その握り方に見惚れました。紛れもなく、山口さんは握りの名手です。左利きの山口さんは、左手の中指、薬指、小指で酢飯を瞬時につかんで丸めると、そこで見事なシャリ玉が出来上がります。人差し指でわさびをつけて、鮨種と合わせ、握るというより形を整えるだけの手数で、あっという間に理想的な扇の地紙の形の握りをつけ台の上に置きます。置かれた握りをつまめば、口の中ですぐにほどよく酢が利いた酢飯が崩れ、鮨種と渾然一体となって、喉の奥に消えてゆきました。(握りの写真はNGとのことで、ご覧いただけないのがまことに残念です)

 

蒸しあわび

 

 「江戸前鮨」の基本が出来ていて、スピード感を持って、無駄なく、つけ台の着地点まで最短距離で握り鮨を送り届ける鮨職人が、今、日本に何人いるでしょうか?山口さんは50歳、これからがすし職人としての最盛期、日本中で屈指の1軒と言って間違いありません。

 すぐ近くに田んぼがあるような場所で、正真正銘の「江戸前鮨」を食べ、大満足で金沢に帰りました。今回のホテルは、昨年できたばかりの「Forza」です。「安心、清潔、静寂」の宿の三本柱が揃っていて、近江町市場のすぐ近く、廉価でもありとてもお薦めです。

 

ご主人の山口尚享(たかよし)さん