飲み屋で酔人はよくカレー談義になる。すると決まって「家のカレーが一番」ということになる。巷の有名カレー店より旨いと言い出す始末。人間の味覚は3歳までにほぼ決まり8歳までに創られると聞く。それは単純においしい、おいしくないの判断が育成されるわけではなく、個人の旨いと感じる思い込みが脳に記憶として残るのだという。要するに幼少期からのお口にあう味を「旨い」と思うのだ。だから家のカレーが一番なのだ(笑)。

 

 お家カレーの具(肉)についても、先日興味深いテレビ番組を観た。東日本は「豚肉」で、西日本は「牛肉」だという。「他の肉は有り得ない」と声を揃える。ちなみに境界線は三重県の長島町だとのこと。埼玉生まれ埼玉育ちの僕の記憶は牛肉。ちなみに母はぐんまちゃんだ。親父は辛いもの、特に香辛料が苦手で、たまに早く帰ってきて夕食がカレーだと、ちょっと悲しそうだった。それなのに、なぜウチはわざわざ高価な牛肉だったのか? その謎は未だ解けていない。

 

 ところで日本に最初に入ったとされるのはチキンカレー。テレビ番組では一切触れられることがなかった鶏肉。チキンカレーの立場は!

 だから今日は僕の一番好きなカレー、チキンカレーを作ろう。(母ごめん、僕には幼少期の舌の記憶、まったく関係ない笑)。そもそもカレーは特別の調理をする必要はない。市販のカレールーのレベルがとても高い。焙煎、スパイスの配合バランスも素晴らしく、好きなお肉にジャガイモ、人参などを入れれば誰が作っても旨い、まさに家庭の味のカレーの出来上がり。ヘタに独自にスパイス等を追加すると、黄金バランスが壊れてまとまりなく逆に味が落ちてしまう。

 

 ただ、こだわりオヤジは、自らスパイスを配合して作りたくなってしまう。

 そのためスパイスは40種類以上常備し、特にカレーに欠かせないフェネグリーク、クミン、コリアンダーは粉末だけでなく、リーフ、種子なども揃える。

 

朝岡スパイスを中心に40種以上のスパイス棚

 もうひとつ重要なのはターメリック。粉末だけでは飽き足らず、生のターメリックを求めて毎年11月から12月にかけて沖縄にウコンの買付の旅をする。ショウガ科のウコンには品種の異なる春ウコン(姜黄)と秋ウコン(鬱金)があり、秋ウコンを乾燥させたものをターメリックと呼ぶ。苦味のある春ウコンも精油成分とミネラルが豊富で、カレーに独特のコクが出るので僕は一緒に使う。ウコンは冷凍保存が可能なので、大量に仕入れたウコンが、我が冷凍庫に眠る。

 

沖縄県産の生ウコン

【チキンカレーレシピ】
鶏もも肉と玉ねぎと15種のスパイスカレー

 

A[鶏肉]400g
1、前日、鶏もも肉を揉み込みマリネして一晩冷蔵庫で寝かせる。
(ターメリック粉末、天日塩、黒糖、おろし生姜、おろしニンニク、ヨーグルト)
2、プライパンにごま油(白)をひき、先に皮面から両面こんがり焼く。

 

B[玉ねぎ]大量
1、みじん切りした玉ねぎをごま油(白)、沖縄の天日塩のみで低温でじっくり1時間ほど飴色になるまで炒める。半分は取り出し、残り半分をさらに30分から1時間ほどトロトロに炒める。(玉ねぎの食感、甘みにグラデーションをつけるため)
2、プライパンに玉ねぎをあわせ、おろし生姜、おろしニンニク、コリアンダー、クミン、トマトピューレを混ぜて弱火で馴染ませる。

 

C[スパイス(マサラ)]
1、プライパンにスパイス、ごま油(白)50mlを入れて焦げないように低温で焙煎する。香り立ち、ふつふつと泡が出てきたらココナッツミルク(無添加)をあわせてミキサーにかける。
2、舌触りがいいように入念に細かくさらさらにするのがポイント。
(黒胡椒ホール、クミンシード、フェネグリーク、生姜、ニンニク、唐辛子、山椒の実、春ウコン、秋ウコン、グローブ、こぶみかんの葉、コリアンダー、ローリエ、ナツメグなど)

 

A[鶏肉]B[玉ねぎ]C[スパイス(マサラ)]をすべて鍋に入れ15分ほど弱火で煮込む。水は使わない。あまり煮込むと香りが飛び、肉も固くなるので注意。ターメリックライス、五穀米など好みで炊いたライスにたっぷり添えて完成。

 

「スパイシーチキンカレー」五穀米にプチトマト、茹で卵を添えて

 うーん旨い。自画自賛のチキンカレー!
 やはり、お家カレーが一番だ(笑)。

 

【様々なお家スパイスカレー】

手羽元、筍、マスカルポーネチーズにナンプラーがキメ手の「アジアンレッドカレー」
クミン、コリアンダー、フェネグリークをプラスして「咖喱麻婆豆腐」
牡蠣鍋の〆は、ターメリック、ガラムマサラで簡単「カレー雑炊」

 

【リレーエッセイ「スパイス・カレー編」】
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「アジアごはん、なにが恋しい?」コロナ禍で旅に出られない今、頭に浮かぶのは—— 中田浩資