カレーに酒を合わせる必要はないと思う私だが(酒より米の方がいい)、カレー以外のスパイス、香辛料を使った料理には酒はあった方がやっぱりいい。
 そんなことに気づいたのは、京都の立ち飲み屋「壱」でのこと。日本酒が常時200種類以上あるというその店で頼んだきゅうりの糠漬けに軽くかけられた「黒七味」が日本酒にとても合っており、大きな衝撃を受けたのだった。次に頼んだおでんにも、黒七味がかかっていた。おでん自体はもちろん出汁が効いていて十分美味しいものなのだが、黒七味と合わせたおでんは格別で、和を感じさせる最高の日本酒のつまみになっていたのだった。
 もちろん、その京都旅行の帰りには、何本も黒七味を買い込んで新幹線に乗り込んだものだった。

 

 そもそも黒七味とはどういうものか。黒七味を生み出した原了郭のホームページによると、「原料は白ごま、唐辛子、山椒、青のり、けしの実、黒ごま、麻の実の七種類。材料をから煎りし、唐辛子や山椒の色が隠れるまで丁寧に揉み込むことによって独特の濃い茶色となり、これが黒七味と称するゆえん」とある。
 なるほど。複雑で豊かな香りと上品な辛さは、こうした手間ひまをかけたものだからこそ出せるのだろう。

 

 その京都旅行以来、私が自宅で一番よく使うスパイスは黒七味になった。まさに魔法の一振りである。普段の料理、いや料理とまでいかないものでも一振りするだけで、粋な和テイストのおつまみに変わり、日本酒、ワイン、焼酎との合わせ方でこれまた味わいが変わるのだから、ついついなんでもかけて試してしまう。

 

 ところで、京都はカレーうどんでも有名だ。いろんな店があるが、私は京都に着いたら新幹線改札口からほど近い原了郭京都駅八条口店へ行く。この店には黒七味が常備されていて好きなだけカレーうどんにかけられるのだ。ちなみにここではカレーがメインだから酒はいらない。冒頭に書いたようにカレーに酒を合わせる必要はない。酒をたしなむ夜に備えて、サクッと食べるだけだ。

 

 もしも一生にひとつのスパイスしか使えないなら、私はこの黒七味を選ぶだろう。

 

スパイス観を変えた黒七味がかかったきゅうりの糠漬け
同じく黒七味が効いたおでん。大根には山椒がかかっているが、山椒の爽やかな辛みも癖になる
原了郭の黒七味。木の容器もいい感じ
京都のかけつけ一杯はこのカレーうどん。黒七味をたっぷりかけて頂きます

 

文・写真/サバラン昭子(TABILISTA記者)

 

【リレーエッセイ「スパイス・カレー編」】
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