文と写真・下川裕治

 

■隔離生活の運動不足を解消するのに行ったこと

 タイに入国する人は国籍に関係なく、全員が2週間の隔離を課せられた。かなり厳格な隔離である。PCR検査を受ける以外はドアの外にでることはできない。僕は深夜、こっそりと廊下に出たが、1分ほどで戻った。

 隔離も1週間をすぎると、かなり楽になってくる。快適というより、諦めの心境だろうか。

 食事、洗濯、PCR検査などの不安もしだいになくなっていく。隔離の日々が淡々とすぎるようになっていく。しだいに曜日がわからなくなってくる。

 運動不足──。それは隔離がはじまった2日目ぐらいから感じていた。日本にいて、日々ジョギングに汗を流すタイプではないが、電車に乗るために階段をのぼり、オフィスまで道を歩く。しかし隔離生活は、そういった日々の動きが封じられてしまう。意図的に体を動かさないと、なんだか疲れが澱のように溜まっていく感覚に陥る。

 以前に隔離を経験した人の体験動画をみると、毎朝、ラジオ体操をやっていた。バンコクのホテルに響く、ラジオ体操のメロディは妙な感じだったが、その心境がよくわかった。

 体を動かしたいというより、朝、起きてラジオ体操をするという行為が、隔離生活には必要だった。そうしないと、生活にメリハリがつかなくなってしまう。

 原稿が遅れ、俗に缶詰といわれる状態になるときもそうだった。しっかり寝て、決められた時間に食事をとる。そういった生活を送らないと、効率はさがっていってしまう。隔離生活も同じだった。

 ラジオ体操をダウンロードし、毎朝、体を動かすようにした。誰に会うわけではないが、朝、シャワーを浴び、昼食後にちょっと昼寝。そしてまたシャワーを浴びて原稿を書く。そんな生活を続けていった。

 

この部屋で体を動かす。日本のビジネスホテルよりは広いから、少しは楽?