文/佐藤美由紀

 

 「なんなんだ!? このじいさん、いや、この大統領は……!」

 2012年6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで行われた国連の会議で、南米の小さな国の大統領が衝撃的なスピーチをして話題になり、その続きで彼の暮らしぶりがメディアで紹介されて、私は驚き、その人となりや生き様に強烈に興味を覚え、ついには本まで書いた。

 

 「そういう国って、あったよね。確か、サッカー強いよね」

 この程度の認識しかなかった私が、空路30時間以上かけて、その小さな未知なる国—ウルグアイ—に、2度、足を運んだ。その大統領—世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカ—に会うために。そして、彼の暮らしぶりを見るために。

 にしても、ムヒカは来日したりなんだので、いっとき日本ではフィーバーしたけれど、どういうわけか、ウルグアイという国はまったくだったな……。

 だから、この国のことは、相変わらず日本ではほとんど知られていない。というわけで、今さらながらの連載スタートは、リベンジの意味もあったりして(私はウルグアイのまわし者でもなんでもないけれど)。

 

 2020年10月20日、高齢などを理由にムヒカは政界からの引退を発表した。

 そのニュースは『NHKニュース7』でも伝えられたし、東京新聞は見開きで特集記事を組んだ。ブームが去ってから久しく、日本では忘れ去られていた感もあるが、こうした報道で、ムヒカのことを思い出した人も多いのではないだろうか。

 絶妙なタイミングだった。

 

 〈貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ〉

 〈私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために、この地球にやってきたのです〉

 

 よく知られたムヒカの名言の数々。コロナ禍という、思いもよらなかった未曾有の危機に直面し、私たちの価値観が大きくひっくり返されようとしている今、改めてひも解くと、前よりも、もっと心に響く気がするのは、私だけだろうか。

 ムヒカの哲学、それに則った生き様や発言は、私たちに、「豊さとは何か、人生で大切なこととは何か」を考えさせてくれる。

 

 そんなムヒカを育んだ国・ウルグアイ(主に首都モンテビデオだが)は、どんなところなのか。〝自分が見て、聞いて、感じたウルグアイ〟を書いてみようと思う。もちろん、実際に会ったムヒカのことも。乞うご期待!

 それにしても、仕事とはいえ? 仕事なのに? どっちにしても、日本のほぼほぼ真裏への旅は、かなりディープな旅だった(じゃないかと思う)……。

 

 

■ホセ・ムヒカ氏から日本人へのメッセージ

 

世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉
世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉

2015年7月に発売し、ベストセラーとなった『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』に続く第2弾。
今や、その生き方や言葉は人類の財産になろうとしているウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏。今春、日本を訪れたムヒカ氏は日本でもさらに注目されましたが、本書は、ウルグアイでのムヒカ氏本人への単独取材も含め、現在の日本人の心に響く名言を集めたものです。

信念の女、ルシア・トポランスキー ホセ・ムヒカ夫人 激動の人生
信念の女、ルシア・トポランスキー ホセ・ムヒカ夫人 激動の人生

“世界でもっとも貧しい大統領"ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカ。その妻は、国会議員のルシア・トポランスキー。ムヒカに寄り添い、いつも穏やかな微笑みを浮かべる彼女だが、かつてはゲリラ戦士だった。裕福な家庭の娘として育った美少女が、なぜ革命家になり、どう今に至るのか。信念の女性ールシアの波乱万丈な人生を追った一冊!

世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉
世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉

退任したホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領が、2012年のリオ会議での感動的なスピーチを中心に「世界一貧しい大統領」として日本でもブームとなっています。本書は、冒頭にそのスピーチ全文を掲載。そして彼の他の演説やインタビューの中から名言をピックアップして、
ホセ・ムヒカ氏の人となりと思想、生き方をわかりやすく解説します。

ウルグアイはブラジルとアルゼンチンに挟まれた小国(面積は日本の約半分)。首都モンテビデオからアルゼンチンの首都ブエノスアイレスまでは飛行機で1時間弱の近さだが、両都市を挟むラ・プラタ河をフェリーで行く方法もあり、高速艇なら3時間ほどで行くことができる。