文/ステファン・ダントン                                                                                      

 

日本茶ファンの開拓

 

 日本茶のすばらしさに魅せられ、その可能性を確信した私は、その魅力を発信する方法を考えていた。

 かたい言い方をするなら「日本茶の消費拡大に寄与したい」となるのだろうが、私は「日本茶ファンを増やしたい」、とずっと考えていた。これまで日本茶に関心のなかった人たちを振り向かせ、さらにファンになってもらうためにどうするか?

 多くの外国人にとっての日本茶は、苦いような青臭いような馴染みのないもの。静けさの中で粛々と行われる茶道で供される、異文化理解の教材のようなものだったりする。

 日本の若者にとっての日本茶は、コンビニに並ぶペットボトル飲料の中からなんとなく選ぶもの。飲食店のサービスで出されるもの。あるいはお年寄りがすするもの。少なくともオシャレな飲み物だとは思われてなさそうだ。

 彼らを振り向かせるためには、彼らの頭の中にある「面倒くさい」「オシャレじゃない」日本茶像を、「気軽で」「おもしろい」ものに切り替える必要があった。

 そこで私は、日本茶にフレーバーをつけた。

 茶葉に花びらや果物の皮やアラザンでお化粧をして、見た目も楽しめるように工夫した。夏みかん、桃、ラ・フランス、チョコミント、アールグレイ…。まずは、

 「おもしろい! なにこれ?」

 という感想でいいから興味を持ってもらわないと話が始まらない。

 興味を持って手に取る。香りを嗅ぐ。口に入れる。

 「意外とおいしい!」

 という言葉が引き出せれば、新たな日本茶ファン開拓のスタートだ。

 

吉祥寺の街に日本茶を植える

 

 そんな私のアイディアを形にする基地として、吉祥寺の商店街のはずれに「日本茶専門店おちゃらか」をオープンしたのは2005年夏のことだった。

 しつらえはごく和風にした。格子戸を開けると土間に並んだテーブルと中央には赤いソファ。畳の小上がりのある店内。中央には赤いソファ。煎茶、ほうじ茶、万葉茶といったスタンダードな日本茶と、今では50種類以上になったが当初は8種類のフレーバー日本茶を置いた。

 もちろんフレーバー茶とオーソドックスな日本茶の販売が主な柱だが、カフェスペースと、各地から集めた和雑貨の販売もした。

 「この3つの柱のうち、どれかに関心を持つ人がいるだろう。最初のきっかけは必ずしも日本茶ではないかもしれない。まずは、店に入ってもらうことが大事だ。その人がおちゃらかファンになってくれれば、その人を日本茶ファンにしてみせる!」

 そんな思いを店の外の小さな花壇に植えた茶樹に込めた。

 「お茶は植えてから収穫まで5年かかる。でもそれから70年は収穫ができる。焦っちゃだめだ。最初はゆっくりと、おちゃらかと日本茶を吉祥寺の街に根付かせることを考えよう」

 茶農家からもらった苗木は、丹精すると少しずつ成長していった。

 

おちゃらか吉祥寺店のオープン当時の様子。店の外には育った茶樹がある。