文/光瀬憲子
台湾人が日常的に食べているものを語るシリーズの2回目は、朝ごはんの代表格、豆漿(豆乳)について、紹介しよう。
■豆漿店の高い壁
私が台湾で暮らすようになった90年代初頭、まだ右も左もわからない外国人にとって豆漿の店はとてもハードルが高かった。豆乳だということは知っていたのだが、セルフサービス度が高いし、朝の忙しい時間帯に注文でとまどっては周りに迷惑をかけそうだ。

美味しそうに湯気をたてる肉まんのようなものもあるが、見たことのない食べ物もたくさん並んでいる。どれとどれを組み合わせて食べればよいのかもよくわからない。そもそも当時は日本でも豆乳を飲み慣れていなかった。だから、ひっきりなしに客が訪れる豆漿店をいつも素通りして、コンビニで朝食を買っていた。
その後、当時付き合っていた元夫に初めて豆漿店に連れて行ってもらい、その複雑さにやっぱり驚いた。豆乳には温かいものと冷たいものがあり、甘いものとしょっぱいものがある。そう聞いただけで、もう自分で注文することは諦めた。