文/光瀬憲子

 

新刊『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)の取材写真を通して旅行気分を味わっていただくシリーズもいよいよ終盤。前回に引き続き、台湾の最南端を走る南廻線から西部幹線へと乗り入れ、高雄駅の一歩手前にある屏東駅を歩いてみる。

 

■レトロな看板に惹かれて 

『秋林牛乳大王』の外観
『秋林牛乳大王』のパパイヤミルク

 街歩きをするとき、看板に惹かれて店に入ってしまうことが多い。台湾には、長年商売を続けて店構えをリニューアルしても、看板だけはそのまま古いものを使う店というのがたまにある。

 牛乳大王500CCと大きく書かれた看板が掲げられたこの店は、枋寮駅のカフェに置いてあった雑誌で見かけた。この看板の店に行きたい! と思って訪れたのだ。



 南国らしい濃厚なバナナやパパイヤの味そのままのジュースが昔なじみの客を喜ばせている。期待を裏切らない、素朴だが土地の歴史を感じさせてくれるいい店である。

 

■ぬらっとした腸詰、生ニンニク添え 

『大埔大腸香腸』の外観

 テーブルや椅子を道路脇に並べただけの簡素な店に、常にバイクが停まり、ヘルメットをかぶったまま列に並ぶ地元客の姿がある。家族連れ、一人客、若者、お年寄り……。人気店によくある光景だ。

 スープもデザートもテイクアウトが当たり前の台湾では、腸詰も行列に並びながら焼けるのを待ち、アツアツを持ち帰る。そんなテイクアウト客を見ると、いつも幸せな気持ちになる。この人が買う腸詰めを、どんな人が待っているんだろう。子供かな? 恋人かな? 客の後ろ姿から、腸詰めを家のテーブルに並べたときに伸びてくる手や笑顔を想像してしまう。

 

『大埔台帳香腸』の腸詰

 ドイツ人がソーセージを食べながらビールを美味しそうに飲むように、台湾人は腸詰めを楊枝で突きながらビールで喉を潤す。屏東の人気腸詰屋台は、好都合なことにすぐ隣が酒屋である。腸詰め2種盛りプレートに台湾ビール。ザワークラウトに代わるのは生ニンニク。台湾では腸詰めは生ニンニクをかじりながら食べるのが常識だ。これはなんと健康趣向からきている。腸詰めやハムなどの加工食品は鮮やかな赤い色を保つために亜硝酸ナトリウムという発色剤が使われているのだが、ニンニクにはこの有害添加物の吸収を抑える働きがあるのだそうだ。

 

■サバヒーにひと工夫 

『大埔阿華麵攤』のサバヒー料理

 台南人のソウルフードとも言える虱目魚(サバヒー)という魚がある。温かいところでしか養殖できないので、台南以南でしか育たない。

 屏東や高雄にはたくさんの虱目魚養殖場があるが、まるごと1匹をスープや粥に使う台南人とは違って、高雄や屏東の人々は虱目魚を加工して食べることが多い。すり身にしてわざわざ皮を付けたり、団子にしてスープに入れたりする。こうすることで、虱目魚の旨味と甘みがさらに増すのだ。素材の味にこだわる台南流と、ひと手間かけて美味しさを追求する高雄流。どちらも甲乙つけがたい。

 

(つづく)

「台湾の人情食堂」vol.110 (2020.7.10)

 

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台湾の美味しい調味料 台湾醤
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