文/光瀬憲子

 

新刊『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)の取材写真を通して旅気分を味わっていただくシリーズ。ゴールは一周旅行のスタート時、成田発のタイガーエアで降り立った高雄の街。旅の終わりにふさわしい、レトロおしゃれな街・鹽埕(イェンチェン)を歩いてみた。

 

市場にもレトロモダンの風が吹く鹽埕の町

■帰国前夜、高雄の下町で 

 高雄は台北からの高鐵(台湾新幹線)の終点でもあるが、高鐵の左營駅と在来線の高雄駅は少々離れている。

 

リニューアルされた高尾駅構内

 2008年に市内の地下鉄が開通してから一気に近代化が進んだ高雄は、新しい建築物や施設が目立ち、こざっぱりとしている。都市としては台北よりも伸びしろがあるのだが、行き交う人々の歩調がゆるやかで、旅人をリラックスさせてくれる。

 

お高くとまってはいないのだが、どこか品のある鹽埕の商店街

 そんな高雄にも人のにおいのする下町はある。

 台北の艋舺(万華)に匹敵する歴史を持つ町並み、鹽埕だ。艋舺に比べるとあか抜けして、どこか横浜や神戸を思わせるのは、やはり高雄が台湾一の港町だからだろう。かつて高雄には舶来品があふれ、アメリカ兵たちが台湾女性と腕を組んで歩き、バーを賑わせた時代もあった。鹽埕にズラリと並ぶ看板やネオンを見ながら、当時の街の賑わいを想像するのはとても楽しい。

 

鹽埕のカフェ『松藝』で

 レトロな町並みが可愛らしい鹽埕には、おしゃれなカフェも似合う。打ちっぱなしのコンクリートに真っ白な壁と木目調のカウンターを合わせたシンプルな店内でいただくのはタピオカティー。

 ただのミルクティーではなく、プーアール茶や烏龍茶など、深みのある茶葉を使った、鹽埕にぴったりの大人な風味で、タピオカティーの新境地を体験できる。

 

鹽埕の五福四路沿いにあるバー『藍世界啤酒屋』

 一杯やりながら7泊8日の旅の余韻に浸りたいとショットバーを訪れた。長いカウンターの後ろには、大柄なマスターがひとり。高雄では古株のバーだ。あちこち傷のあるカウンターやクッションのハイチェアがこの町に似つかわしい。オーセンティックバーのような凛とした雰囲気も残しつつ、地元のスナックのようなゆるさもある。マスターと他愛ないおしゃべりをしたり、カウンターの隅で小説でも読んだりしながらウィスキーをすするのが似合う大人になりたいなあと思う。人生も折り返し地点を過ぎたのに、その境地にはなかなか到達できないのだが。

 

油條は台湾朝ごはんの定番

 高雄から出発した台湾一周の旅を終え、日本に帰国する朝、朝ごはんを求めて街を歩いた。高雄で人気の豆漿(豆乳)店にはもうチラホラと客がいる。

 シュッと背筋を伸ばして整列しているように見えるのが油條(ヨウテャオ)だ。豆漿にも、焼餅にも、そしてもち米のおにぎりにも合う不思議な揚げパン。甘いピーナッツ汁粉との相性も抜群だ。賞味期限が短いので、どの豆漿店でも手作りしており、それが店の顔となる。



 この朝ごはんを最後に、しばらく台湾グルメとはお別れになるとは夢にも思わなかった。この旅の友だった時刻表を眺めながら、鉄路で台湾一周旅行の第2弾を夢想する日が続いている。

 

「台湾の人情食堂」vol.111 (2020.7.24)

 

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『台湾一周‼ 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫) 著:光瀬憲子 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台湾の美味しい調味料 台湾醤
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