日本で言う餃子韓国ではマンドゥ(饅頭)と呼ぶ。日本の餃子は半月型がほとんどだと聞くが、韓国のマンドゥは半月の両端をくっつけたもの、しわのあるまんじゅう型など、いくつかのパターンがある。いずれも日本の餃子よりひと回り大きい。

 

 日本は焼き餃子が主流だが、韓国では蒸し煮したチンマンドゥ、茹でて湯切りしたムルマンドゥ、餃子スープに当たるマンドゥクッをよく食べる。日本の餃子のように焼いたり揚げたりしたものはクンマンドゥと呼ばれる。

 

 私にとってマンドゥは亡き母の思い出とともにある。母は朝鮮戦争が勃発した1950年、38度線の北側から南側に避難してきた。当時すでに17歳で、北側の食文化が身についていたため、我が家ではマンドゥがたびたび食卓にのぼった。

 

 古くから中国やモンゴルの食文化の影響を受けている朝鮮半島北部ではマンドゥがよく食べられてきた。気候は寒冷、山がちで稲作には不向き。米の代わりに小麦やトウモロコシ、ジャガイモ、蕎麦などで作った物を食べたということもあるだろう。

 

 母が作ってくれたマンドゥは、豚肉、豆腐、ネギ、モヤシ、ニラなどがたっぷり入っていて、大きさは成人女性のこぶしほどあった。私が子どもだった70年代、マンドゥは肉・野菜・炭水化物が摂れる総合食であり、ちょっとしたごちそうだった。醤油系のタレにつけて食べると格別だったが、そのまま食べてもあっさりしていて美味しかった。

 

 朝鮮半島の食べ物というと、真っ赤で辛いものばかりと思い込んでいる人がまだいるかもしれないが、もともと唐辛子を多く用いるのは温暖な気候で食べ物が腐敗しやすい南部である。本来、北部の食べ物は総じて淡白で、日本の人の口にも合う。澄んだスープと蕎麦粉が香る麺の平壌冷麺はその好例だ。

 

 日本で正月に雑煮を食べるように、朝鮮半島では旧正月にトックッ(餅入りスープ)を食べる。稲作が発達している南部では米で作った餅がスープに浮かんでいるが、京畿道や江原道辺りまで北上すると、餅とマンドゥが両方浮かんでいる。さらに北上すると、マンドゥがメインの雑煮、つまりマンドゥクッが食べられている。

 

 マンドゥは韓国ではありふれた食べ物だが、冷凍食品や粉ものメインの軽食店では母が作ってくれたようなものには出合えない。そんなとき、私は母と同じ北側出身者が経営する老舗冷麺店に行く。サイドメニューとして本格的なマンドゥを出す店が多いからだ。

 

 老舗冷麺店の常連には母のように朝鮮戦争のとき北側から避難してきた人が多い。20年くらい前は店内で北側の訛りがよく聞かれたのだが、最近はそんなこともなくなった。みんな年を取ったのだ。母が亡くなってからもう27年が経つ。

 

粉ものメインの軽食店のチンマンドゥ(蒸し餃子)
ソウルの冷麺専門店の半月型チンマンドゥ(蒸し餃子)
餃子専門店のチンマンドゥ。半月の両端をくっつけたもの
餃子専門店のマンドゥクッ
北側出身家庭の雑煮。餅とマンドゥが両方入っている例
北側出身家庭の雑煮。マンドゥがメインの例