神戸南京町

 コロナ禍のお取り寄せブームが続き、お手軽に楽しめる餃子が人気になっているようだ。とはいえ、横丁ライターとして飲み歩く筆者の暮らす関西には様々な特色を放つ餃子屋があり、どうしてもお店で食したくなるところ。特にお気に入りなのは「味噌だれ」で食べる餃子だ。関東の人には馴染みがないかもしれないが、関西、特に神戸では餃子を味噌のたれで食べるのが名物となっている。

 そもそも味噌だれ餃子は、神戸南京町にある餃子専門店「元祖ぎょうざ苑」が発祥とされている。「元祖ぎょうざ苑」の初代店主が中国にいた頃、移住してきた日本人が現地のたれを使わずに味噌で食べていたことからヒントを得たという。

 少し酸味の効いた自家の製味噌だれに、好きな配分で醤油と酢を混ぜるのが元祖ぎょうざ苑のスタイル。この店はたれ以外にも拘っている。餡は豚肉にジューシー感とコクを出すために神戸牛を隠し味にしており、本場中国と同様でニンニクは使っていない。皮は手作りでもっちりとしており、これがまた味噌だれとよく絡むのだ。最近は薄皮の餃子が人気で、もっちりした皮の餃子を日本で食べる機会は少ないが、たまに無性に食べたくなる。そこにはかつて異国で働いていた日々を懐かしく思い出したくなる食の記憶が絡み付いているからかもしれない。

「元祖ぎょうざ苑」の味噌だれで食べる餃子

 

 2015年、バンコクで働いていた私は仕事帰りに同僚達とよく近所の中華料理屋に行っていた。名前はあるのだろうが、その頃は気にしていなくて「小籠包または餃子の店」と言えば、その店だった。朝4時まで営業しており、深夜に仕事が終わる私達にとって行きつけになっていた。場所は日本人街タニヤのすぐ近くにあり、物価の高い場所にも関わらず料理は50~120バーツ(約170円~400円)とリーズナブル。中でもよく食べていたのが1皿50バーツの小籠包とニラ入り餃子。手作りの皮がもちもちしていて美味しかった。

 同僚の女の子達との主な会話はバンコクを出た後はどこの国に行くのか、それとも日本に帰るのか。バンコクでは各国を転々としながら働く子もいれば、限定的に海外で働く子までそれぞれだ。お互いに聞かれたくないこともあるので、あまり深くは詮索しない。そんなことを考えながら、言葉とともに餃子をビールで流し込む。餃子は茹でてある水餃子で青島ビールやシンハービールによく合う。アジアのビールは日本に比べると薄味で気付けば何本も瓶が空いていく。

バンコクの中華料理屋の水餃子

バンコク・タニヤ通り

 海外で日本人同士で共に行動していても、いずれは散り散りになる。皆、将来に不安はあるけれど、飲んでいるときだけは忘れられる。どこか寂しげに毎晩のように飲み明かしていたメンバーのことをふと考えたくなる時、アジアの横丁で食べた餃子に似た風味の店を求めて南京町で飲み歩くのだ。

神戸南京町