文と写真・室橋裕和

 

 どうにも、うまくいかない。

 この夏、僕は煩悶し続けていた。次々と新規の仕事が入るのはいいけれど、取材先のアポが思うように取れないとか、取材予定の外国人がすっかり忘れていたとか、コロナ禍などさまざまな事情で取材そのものが中止になったりとか、遅々として進まない案件が山盛りとなってしまっていた。

 当然、ほかの仕事も遅れるし、アレはどうしようコレはどうすればいいだろうとか常に心かき乱されているので、原稿のキレだって悪くなる。僕は非常にメンタルが弱いのである。

 こうしてドッサリ積まれた仕事の山をそれでも少しずつ掘削しているわけだが、休みはない。最後に仕事をしなかった日はいつだろうと考えてみても思い出せない。夏休みもクソもなく延々と労働し続けていたところに、体調がいきなり悪化した。

 うわさの「副反応」だった。ファイザー2回目を「個人事業主の職域接種」というありがたいカテゴリで打たせていただいた翌日、思いのほか熱が出た。とはいえ38度ちょいだったのだが、ふだんはきわめて健康なだけに、たまの発熱は堪えた。それでも仕事をしなくてはならないのは誰一人助けてくれるもののないフリーランスのきついところで、熱にうなされ黙々と原稿を書きながら、どうにも運気が落ちている……と感じた。

 なにかこう、気分を変えて、ツキを変えたい。こういうとき人は神社仏閣を巡ってパワスポのご利益をいただくのかもしれないが、僕は神も仏も信じない罰当たりな人間。それでも、ひとつだけ守護神のように感じている存在もある。媽祖さまだ。

新大久保にはさまざまな神さまがいるが、媽祖さまもその一柱