■ムヒカが収監された刑務所は廃墟になっていた!

 

 マリファナ・ショップに寄り道したあと、ダニエルが案内してくれたのは、かつてムヒカが収監されていたという元刑務所だった。

 

モンテビデオの中心部にある「元ミゲレッテ刑務所」。見るからに〝廃屋感〟が漂う。だが、しかし。あとでわかったことだが、この刑務所はとても巨大で、私たちが見学したのは、ほんの一部。なんと、別棟は廃屋感を生かしつつも、リノベーションされて現代アートの美術館兼展示場として使われていた。アーティストの住まいにもなっているらしい。

 

 塀の外から建物を見上げる。

   どこからどう見ても廃墟で、あまりにもボロ過ぎて、不安になってくる。

   しかし、勝手知ったる、なのか、ダニエルは、崩れかけた通用門のところにいる門番(?)のおじさんに一声かけ、雑草が生茂る敷地内に分け入り、躊躇することなく建物の中に入っていった。私たちもあとに続く。

 

   もう長い間、放置されたままなのだろう。建物の内部は荒れ放題で、野鳥の巣窟になっているらしく、床は鳥のフンで覆い尽くされていた。

    人一倍キレイ好きのIさんの顔がどんどん強張っていく。

    多分おじさんの飼い犬だと思うのだが、人懐っこい犬が、尻尾を振りながら私たちに近づいてきて、遊んで欲しそうに見上げるのだけれど、それどころじゃない。

   犬と戯れあっていて、フンで滑って転んだりしたら取り返しがつかないし、私たちは二人とも犬好きではあるが、こんなところを歩き回っているワンコにじゃれつかれて服を汚されたくないし……。別に一張羅を着ていたわけではないけれど、床の汚れが汚れなだけに……。

 元刑務所の建物は3階建てて、吹き抜けを囲むようにして、各階に独房が並んでいた。好きに見学して、好きに写真を撮っていいと言われていた。でも、今にも床が抜け落ちるのではないかという恐怖と、得体の知れない気持ち悪さとで、私たちは、さっさと切り上げて、次の場所へとダニエルを促した。

 

中は荒れ放題。野鳥の巣窟になっているのか、床は鳥のフンがいっぱいだった。

吹き抜けを囲むようにして独房が並んでいる。

独房の窓には、外からも部屋番号がわかるようにナンバリングが。

外壁には囚人の落書きと思しき文字がギッシリ。

門番のおじさんの飼い犬らしいワンコ。妙に人懐っこい犬だった。

 

   せっかくムヒカゆかりのスポットに連れてきてもらったというのに、私は、投獄されているときのムヒカに思いを馳せる余裕を失っていた。

 

 「ホント、あそこ、気持ち悪かったですよね」

 

   今でもときどき、Iさんは思い出したようにぼやくことがある。