文/ステファン・ダントン

                                                                                         

■Japanese Food Trade Fair in Bangkok

 

2014年1月、四万十のあにきHさんと私はバンコクにいた。「Japanese Food Trade Fair in Bangkok」に出展することが目的だった。

2012年の冬、ふとした出会いから四万十オリジナルの「四万十河原茶」の開発やプロモーションをともに手がけてきたあにきと私。「次は世界にアピールだ。まずはアジアから。バンコクからだ!」とやってきた。

できあがって間もない「四万十河原茶」やあにきのつくっている四万十の「だし」はもちろん、おちゃらかのフレーバー茶もそろえた私たちのブースは連日大盛況だった。

「手応え十分だね。ただ、タイで売るには値段が高いね」というあにきに、「タイにはもちろん目の肥えた富裕層がたくさんいるけれど、そこだけにアピールすることを目的にするのは違うね。普通の人に普通に日本茶を楽しんでもらいたいよね」と答えながら、所得格差の大きな国々にも日本茶ファンの裾野を広げるための方法を考えていた。

 





展示会場の様子。下の写真はあにきと私

 

■バンコクのまちで

バンコクの朝、目覚めたホテルの部屋から見渡す景色は、現代的な高層ビルの林。味気ないどこにでもある都会の風景かというと、眼下には人の波。「平日なのにさすがアジア!」と思ったが、何か特別なイベントの準備をしている様子にも見えた。反政府集会の準備中だった。地上におりて、ホテルを一歩出て散歩をすれば南国の花が濃厚な香りを放つ。木陰の露店ではフルーツやジュースをのんびりと売っている。ものすごい密度で行き交う人やオートバイに、現代とか都会とかではなくアジアそのもののエネルギーを感じる。

 





ホテルの窓から見た人々や露店

 

日が高くなってくると様子がおかしいことに気がついた。道路をいっぱいに歩く人々が手に手に国旗となにか別の旗(あとから思い起こせば支持政党のものだったようだ)を持っているし、周囲には警官隊の姿もある。当時のタイでは2006年から続く政治的混乱とそれにともなう反政府デモに対する国軍の鎮圧が繰り返されていた。2010年の暗黒の土曜日事件に、世界中の批判が集まっていたことも知っていた。それなのに、現実のバンコクで自分の目で見た反政府デモは、何かのお祭りのパレードのように牧歌的だった。ホテルの窓から見下ろした反政府集会の準備だってイベント会場のように楽しそうに見えてしまった。それは、私の目が南国のムードに幻惑されていたのかもしれないし、どんなときにもゆったり楽しそうに見えるタイの庶民の表情と動作が、私の目から彼らの混乱と緊張を隠してしまっていたのかもしれない。

デモが行われていたその同じ日に、私はトゥクトゥクに乗ってみた。あにきとその奥さんと。ほほには花とフルーツの濃厚な香りとたくさんの人の汗と食べ物がまじったような匂いが風にのって頬にあたった。デモの裏側は眠気を誘うようなのんびりした午後のバンコクの日常だった。

 

デモ隊の人波

デモ隊の4人乗りバイク
トゥクトゥクで牧歌的に記念撮影

トゥクトゥクから見た普段のバンコク

トゥクトゥクで風を感じる