9月19日 [SUN]

 夕刻まで仕事をして「ひばり屋」へ歩いて出かけて珈琲を飲む。「おとん」の池田哲也さんがいた。そのあとで「ガーブ・ドミンゴ」へ寄って神里竜子さんの皿を衝動買い。某カフェで沖縄政治の事情通に会って、さまざまな「裏話」を聞かせてもらう。帰りに弁当を買って帰宅。

 

9月20日 [MON]

 午前中、黒川隆介さんの詩集『この余った勇気をどこに捨てよう』(2021)を読む。ときどき声に出して読む。詩人はいったいどうやって言葉を思いつき、紡ぐのだろうか。午後から、レンタカーで沖縄市の古謝へ。とても感慨深いインタビューができた。いつ始まって、いつ終わったかわからない濃密な「語り」を引きだせた余韻のようなものが残る。ぼくはほとんど発問しなかった。相手の言葉を確認するために聞き直す以外は、「ああ」とか「そうですか」という合いの手を入れて流れを変えたりする程度。聞き手がしゃべりすぎるインタビューはたいがい出来が良くない。ぼくはひたすら相手がしゃべるのを聞くのみに徹することができた。インタビュー後は、やはり高揚する。その帰り道に相手の言葉を反芻するのがやっぱり好きだ。

 その足で宜野湾の大山に寄って、ちょっとした取材。ひばり屋に寄って珈琲を飲み、帳がおりてきたので帰宅して、またまたトマトソースでパスタ。そういえば、ひばり屋にいるとき、主の辻佐知子さんが笑いをこらえて「そのTシャツ、おしゃれなの? 」と聞いてくるので、見れば、裏表逆、前後逆。ブラックのTシャツだったので気づかなかった。今日会った人たちは笑いをこらえていたんだろうな。辻さんが「ダブル逆」Tシャツを着たぼくをフェイスブックに載せていた。違和感はずっと感じていたが、ちゃんと確認しようと思わなかった自分が笑える。

 

9月21日 [TUE]

 QABの島袋夏子さんとランチ。久しぶりにいろんな話をした。彼女はQABにうつる前から地方局でドキュメンタリーを作り続け、数々の賞を得ているすごい記者なのだが、取材者が被取材者の「人生」にどう有益なかたちで介入するのか、どこまで介入していいのか、してはならないのか、などを具体例等ををあげて話し合う。昼間から重い話をして脳味噌が疲れてしまった。彼女は、ジャーナリストのジョン・ミッチェルさんらと『永遠の化学物質 水のPFAS汚染』(2020)というブックレットを出している。沖縄(だけではない、大阪や東京でも)の米軍基地から流出した化学物質で沖縄の水や土地を汚染している。今年、ジョン・ミッチェルさんはそれら日本の環境汚染の実態を告発した『POISONING THE PACIFIC』という本でアメリカNPOの環境ジャーナリズム協会のレイチェル・カーソン環境出版賞の二位に選ばれた。衆議院議員の屋良朝博さんも国会などで追及しているが、米軍による土壌汚染はほんとうにひどい。彼らは日本をゴミ捨て場ぐらいにしか思ってないのだろう。

 部屋に帰還してから、またトマトソースで煮込みを仕込み、仕事をする。一段落して、東京都写真美術館で見てきた、山城千佳子さんの個展「リフレーミング」の公式パンフレットを読み直した。前にお目にかかったときにこの個展に出されていた新作の話をしておられたような気がする。山城さんの作品を回顧できるのはすばらしい機会だった。山城さんの表現を見てどう言葉にするか、わからないでいるが、「沖縄」が彼女の「身体性」を透過することにより、ある種の原初的な沖縄の姿が社会問題化に巻き込まれていくにつれ、人々が狂い、もがき、躍る。

 公式のパンフレットのまえがきを読んで、綿密なロケハン、つまり現場取材をしていることに驚いた。山城さんは山肌がむき出しの鉱山地帯の中に残るちいさな集落にばったり出会うことから着想を得ていったそうだ。荒涼とした削られた岩石の中に取り残された集落には聖地が残り、岩石の山の一部にも聖地が破壊されずに残されているという。目の前の海ではマリンスポーツを楽しむ人々がいて、そのせいで折れてしまった珊瑚のかけらを家に持ち帰り再び命を与えようとしている人がいることも知る。砂漠化していく現況。その中に深く眠り、沈む、残された人々の聲のかたち。そういった風景から何かを感じることができのるか、何も感じないのか、研ぎ澄まされた山城さんの感性に触れると、澄んだ美しいブルーだが、浅く潜ると絶望的に暗く感じた海で方向感覚を失った、かなり前の記憶を思い出した。あれからぼくは海につかるのをためらうようになった。

 

9月22日 [WED]

 

 朝9時にリモート取材後、プラモデル製作に取りかかる。じつは沖縄滞在初日からロボットのプラモデルをパーツごとに「牛歩戦術」でつくってきた。今日、それがやっとこさ完成する。プラモデルなんて小学生のときにつくったのが最後だった。極小の部品を小型のニッパーを使って切り離し、組み立てる。集中力を高めようとか、小脳出血をやったあともそういう作業ができるだろうか試してみるというもっともらしい理由をつけてはみたが、楽しいわ、これ。昼まで仕事をして桜坂劇場でドキュメンタリー映画『東京クルド』を観る。よくできた、必見の作品。現代日本の暗部をへんな演出めいたものなしにえぐりだしている。観終えたら帰還して仕事の続きをする。

 夕刻に酒とつまみを買って、森本浩平さんの自宅で「宅飲み」。森本さんは豚しゃぶしゃぶを用意してくれていて、高級な肉なので会費制にした。普久原朝充さんも合流。彼は、普天間に今も存続するAサインバー「CINDY」 ─ぼくも何回か行ったことがある─ のオープン40周年の記念するウイスキーボトルをどこからかもらったそうで持ってきた。なんだかもったいないので封を切らず、森本さん宅に置いてきた。ぼくはビールと芋焼酎を買って行ったが、三人ですべて飲みきり、久々に三人ともべろんべろんに。