9月29日。6000個の駅弁を食べた男としてTVでもお馴染み、漫画『駅弁ひとり旅』の監修者で鉄道フォトジャーナリストの櫻井寛さんが、AKB48岩立沙穂さんとのYouTube対談のために来社されました。この日、櫻井さんは取材先のスイスから帰国後2週間の自宅待機期間を経て、ようやく自由の身となったばかりでした。開放感もあってか、今年1月の京王駅弁大会以来となる二人の駅弁トークは大いに盛り上がり、終始なごやかな雰囲気で撮影は無事終了しました。(動画は近日公開予定なのでお楽しみに!)

 

 ただ今回お伝えするのは駅弁の話ではありません。撮影時に櫻井さんからお聞きしたコロナ禍の海外取材苦労話です。櫻井さんといえば「駅弁」のイメージが強いですが、肩書は鉄道フォトジャーナリスト、つまりカメラマンなんです。取材した国はなんと95か国、渡航回数は240回以上、世界を舞台に活躍する旅の達人、まさにタビリスタです。コロナ禍で渡航が制限され長く海外取材ができず、忸怩たる思いをされていたようですが、ヨーロッパでの規制緩和が進んだこともあり、久しぶりの海外取材が実現することとなったのです。

 目的地はスイス。1871年にヨーロッパ初の登山鉄道として開通した「リギ鉄道」150周年を祝う祭典の取材でした。開通式にはちょうどスイス訪問中だった岩倉遣欧使節団が参加したともいう日本とは縁のある山岳鉄道です。ワクチン接種証明、PCR陰性証明などを揃え、万全の事前準備で出国、スイスへの入国もスムーズで現地での取材も快調に進んだそうです。
 

リギ鉄道の蒸気機関車LOK7(左)、リギクルム駅にて(右)

 問題は帰国でした。タビリスタ読者の方には興味深い体験談だったので、ここで紹介させていただくことにしました。新規感染者が激減した昨今、海外渡航の規制緩和に関する報道も散見されるようになってきていますが、まだまだ現実は厳しいようです。

 

今回のスイス取材で、一番大変だったのは、日本への帰国時でした。
(スイス国内では、 入国及びコロナ関連のストレスは皆無でした)
まず、成田空港到着72時間以内に、PCR検査を受けなければなりません。
つまり、それはスイス国内でというわけですが、私は搭乗48時間前にチューリヒ空港でPCR検査を受け、搭乗12時間前に、日本語の陰性証明書を受領しました。スイスで、日本語の「紙」の証明書です。それが日本の厚労省の決まりなのです。メールやスマホ画面提示はNGで、紙のみOKとは、まるで昭和時代みたいですが、これが現実です。

 

入国に際しての厚労大臣、法務大臣への誓約書

 多くの現場でペーパーレス化が進み、デジタル庁も新設されたというのにびっくりですね。しかし、これは帰国への長い道のりのプロローグにすぎませんでした。

 

続いて、チューリヒ空港での帰国便チェックインの際、日本の厚労省への健康状態や自宅などプライベートのデータのウェブ送信を課せられました。つまり、チェックインカウンターでパソコンを開くわけです。(持っていない人はどうするのでしょう?)厚労省からの記載項目ですが、住所の番地の書き方が一種類しかなく、私の住所の、「〇〇市〇〇567−89」の、「567−89」と打ち込むと、何丁目何番地と書くようにNGが出るわけです。それをクリアしないと、厚労省のQRコードが発行されずに、搭乗できないわけです。窓口の女性はスイス人なので、相談も出来ず、悪戦苦闘しておりましたが、例、1−1 となっていたので、試しに、5−6と打ち込むとパスできました。ところが、成田到着時には、住所が違うと疑われ、ことの次第を話し、これは厚労省の書式がおかしい。日本には丁目のない住所はいくらでもある。と、やり返し、ようやく溜飲を下げることができました。

 我が社の住所も[東京都新宿区東五軒町3番28号]で、丁目はありません。3丁目28番地ではなく、3番28号なのです。ちなみに会社界隈の住所は、新小川町、筑土八幡町、津久戸町、西五軒町…とどれも「〇丁目」はなく、「〇番地」から始まります。日本にはまだこのような住所がたくさんあるはずなので、早急に改善して欲しいところです。

 空港へたどり着いても試練は続きます。批判も多く、何かと話題の日本の水際対策ですが、思わぬ問題もあったようです。 

成田空港には、17:02に着陸しましたが、PCR検査と、アジア系外国人による要領を得ない日本語での説明やチェックを何回も何回も受け、税関を出たのは3時間後の20時でした。なぜ日本の検疫担当者が外国人なのか不思議です。
日本人なら一言で済むところを、何度も同じ事を繰り返すのはストレスです。

思い切って、
「あなたは、厚生労働省の人ですか?」と、尋ねたら、
「違います」
「じゃあ、給料はどこからもらってますか?」
「給料は会社からです。とても安いです」
「お客さん(私のこと)は、スイスから帰って来たから、お金持ち!」
「スイスにブラックマネーいっぱいあるね」

この漫才のような会話、事実です。

 笑っちゃうけど笑えない入国審査の実態です。
 しかし、櫻井さんの苦難はこれでおしまいではありませんでした。

想定外だったことは、帰宅の交通手段です。公共交通は利用不可なので、タクシーしかないと思いきや、タクシーは公共交通なので不可、ハイヤーならOKとのこと。結局、20時で閉店のシャッターを降ろしかけていたレンタカー店のご厚意で帰宅することができましたが、タクシーが公共交通とは、知りませんでした。誓約書をよく見直すとカッコ書きで以下の記述が…。

公共交通機関(不特定多数が利用する電車、バス、タクシー、国内線の飛行機等)…

ちなみに、タクシーとハイヤーですが、構造上、どんな違いがあるのでしょうか? ハイヤーよりもタクシーの方が、コロナに感染しやすいということですか? 

帰国後2週間の自宅待機中は、1日4回、MySOS(入国者健康確認センター)からスマホに連絡が入り、その内3回は、自宅からスマホをクリックするだけでOKですが、1回はビデオ電話なので、逃れようがありません。まさに軟禁状態です。ちなみに、スマホを持っていない人は、成田空港で強制的に有償レンタルとなります。

 

1日1回報告する健康状態報告メール

入国者健康確認センターから毎日1回来るビデオ予告メール

 事実は小説より奇なり。いま海外渡航予定のある人は気をつけて下さい。トラブル続きの櫻井さん帰国エピソードでした。

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