夏休みも終わり、慌ただしい日常が戻ってきた。バカンスのトップシーズンに海へ出かけたイタリア人たちは、見事に焼けた小麦色の肌を愛おしげになでながら、「ああ、なんて綺麗な海だったのかしら」とため息とともに夏を振り返っている。一方、夏の間に仕事を余儀なくされた人や、自由に休みの期間を決められる人にとっては、まさにこれからがバカンスの季節。トップシーズンをちょっと外して6月、9月にバカンス休暇を取る人は意外と多く、話を聞くと、「ホテルも航空券も安いし、ビーチは人も少なくて貸切状態。気温が高ければ海にも入れる。ちょっと時期をずらすだけで、安上がりだけど贅沢なバカンスができるんだから最高!」と口を揃えて言う。休暇の期間が決まっている職場や就学児童がいる家族は難しいだろうが、それが許される人にとっては、「あえてトップシーズンを外してバカンスに行く」というのは賢い選択だと思う。今回は、トップシーズンをあえて外した方が得策なシチリア島の小さな街をご紹介しよう。

 

パレルモから1時間。美しい海と街歩きの両方を楽しめる古都

 シチリアの州都パレルモから東へ70km、電車かバスで1時間弱でアクセスできるチェファルー(Cefalù)は、高い岩山と真っ青なティレニア海にちょこんと挟まれた小さな古都。街の起源はギリシャ時代に遡り、その後、ビザンチン、アラブやノルマンの支配下に置かれた歴史を持っている。旧市街の入り口ガリバルディ広場には、アカデミー賞を受賞した名作『ニュー・シネマ・パラダイス』のロケ地でもあるFSのチェファルー駅から徒歩数分で着く。赤茶色の古い建物の背後に、いきなり巨大な岩山がそびえているのが見え、まるで岩山の一部に街がくっついているかのよう。国立公園になっているこの岩山にはトレッキングコースもあるらしいが、今回は海を見に来たので山には背を向けて、旧市街の中心へと向かって歩く。

 

 小さな石畳の旧市街はどことなくエキゾチックな雰囲気が漂い、カラフルな土産物屋やバール、ブティックなどが並ぶ迷路のような細い小道をぶらぶら歩いているだけで、もうバカンス気分が高まってくる。小一時間も歩けば一周できてしまうほど小さな旧市街は、歴史と海を愛する欧州人にとても人気があり、それゆえ7・8月のバカンスシーズンは細い通りがぎゅうぎゅう詰になるほど混雑するらしい。シチリア島の夏は長く、早ければ5月から、遅くとも6月には海水浴ができるほど暑くなり、通年の陽気だと9月下旬まで海に入れる。チェファルーのような街は、実はトップシーズンを外した方がゆったりその街の良さを味わえるのだ。

 

旧市街の入り口ガリバルディ広場(上)。自然と歴史の融合が見事な旧市街のメインストリートはルッジェーロ大通り。この通りと何本もの細い石畳の道が交差している(下)。