中世の洗濯場と美しいビーチ

 たんまり膨らんで大満足のお腹を抱え、旧市街から海岸線へと歩き出す。岩礁が続く海岸線へ向かう途中、旧市街の通りの一角に石のアーチが見えた。覗くと、通りから放射線状に広がりながら降りていく階段がある。街の一段低いところに、広場のような空間があるようだ。興味をそそられて降りていくと、日本の温泉街の足湯のような石の水桶がいくつも並んでいた。不思議に思いつつ、偶然居合わせたイタリア人カップルに「これは何?」と尋ねてみると、「ここは中世時代の洗濯場だよ」と教えてくれた。なるほど、そう言われれば洗濯板のようなものがちゃんと備わっている。ここで洗濯をしながら、井戸端会議に花を咲かる地元の女性たちの姿が目に浮かぶ。

 旧市街の迷路を楽しみながら下り坂を降りていくと、突然、真っ青な海が目に飛び込んできた。ティレニア海だ。波が打ち付ける岩礁の上を、危なっかしい足取りで歩き出す。海は本当に目にしみるように青い。

 

ヴットリオ・エマヌエーレ通り沿にある中世時代の洗濯場(上)。チェファリーノ川の水を引いて洗濯水として利用していたという。海岸線を歩くと入り組んだ岩礁の上にテラス席がある海辺のレストランが見えてくる(下)。海辺のレストランはシーズンオフの11〜3月は閉店するところが多い。

 腹ごなしのつもりで海辺を歩くうち、その海の美しさにすっかり心を奪われてしまった。いくら眺めても見飽きることがない。太陽を浴びながら、岩礁に沿って歩き続けるうち、チェファルーの小さな港に出た。色とりどりの小舟が浮かぶその脇で、子どもも大人も一緒になって海水浴を楽しんでいる。ここからは砂浜の長いビーチが続いていて、誰もが思い思いに寝そべったり、海に入ってはしゃいだり、自由気ままな時間を過ごしている。岸壁の一部と化した家々の足元に広がるビーチは公共のものなので、お金をかけずに一日中海を満喫することができるのもありがたい。水着を着てこなかったことを後悔したが、黙って見ているだけではもったいない。急いで靴を脱いでパンツの裾を捲り上げ、遠浅のビーチから海へ向かって駆け出した。透明な水に素足を浸すと、心の中まで洗われたような気持ちになった。

 



岩山を背後に、壁のように並んだ家々の下からビーチは始まっている。この先、15km以上に渡って、遠浅のビーチが長く伸びている。ビーチ周辺には遺跡や絶景の岬などの観光ポイントも多く、多彩な楽しみ方ができる(上)。トップシーズンには大混雑し、ビーチの水も濁るそうだが、7・8月を外せば穏やかで透明な海を満喫できる(下)。

 

★ MAP ★

<アクセス>

パレルモ中央駅からFSの各駅電車で約50分。列車は1時間に一本の割合で出ている。月〜土はパレルモ市内からSAIS社のバスもチェファルーにアクセスしている。所要時間は約1時間。パレルモから日帰りでチェファルーへ足を伸ばしてみるのもいい。

 

<参考サイト>
・Cefalù 観光情報
https://www.italyguides.it/en/sicily/cefalu
・SAIS Bus
http://www.sitabus.it/en/cefalu-how-to-get-there/

 

「ブーツの国の街角で」vol.21  (2017.09)