夏山トレッキングにハマって数年が経つ。イタリアアルプスの雄大な景色にすっかり心を奪われている私だが、今年の夏はこれまで知らなかったもう一つの山の顔を見る機会に恵まれた。
コーニュの街を歩いていた時、通りの掲示板に『コーニュ鉱山見学ガイドツアー』の張り紙を見つけて興味をそそられた。グラン・パラディーゾ周辺のパノラマはかなり見て来たが、そういえば「山の内側」についてはほとんど知らないな、と思い至った私は早速ツアーに参加することにした。1824年に完成した全長100km以上にも及ぶ巨大な鉱山の採掘場内潜入記をご紹介しよう。

 

■今年から本格始動した鉱山見学ツアー

 

 コーニュのインフォメーション・オフィスで鉱山見学ツアーの予約をしようとしたところ、「この同意書にサインして下さい」と言って承諾書のような書類を渡された。読んでみると、「採掘場内部での危険に関する注意事項」が長々と書かれている。なんでも採掘場内部は一年中3〜7℃で湿度は95%。足元は泥で滑りやすい上、非常に暗い。約2時間のコースはアップダウンがあるので、心臓や足に不安がある人は熟考すること。閉所恐怖症の人も然り。装備として、ヘルメットとヘッドライトは用意されているが、それ以外のトレッキングシューズ、厚手の上着とウィンドブレーカー、手袋、帽子は各自で用意すること。入場前にガイドがチェックし、装備が不適切だと判断された人は参加できない…etc, etc. 簡単に観光気分で参加しようとしていた私だが、この書類を読んでいるうちどんどん不安になって来た。大丈夫かな…。手袋なんて持って来たっけ? 

 不安に追い打ちをかけるように、「スタート地点は標高2030m地点にあるコスタ・デル・ピーノの鉱山施設入口よ。コーニュから歩いて1時間ぐらいで着けるから。開始の10分前には着いているようにしてね!」とお姉さんは明るく言った。ちょっと不安ではあったが、「長い準備期間を経て去年やっとプレ・オープンしたツアーなの。本格的に一般見学者を受け入れるのは今年が初めてだし、知られていない山の歴史が体験できるわよ!」とお勧めされて心は決まった。諸々、『何があっても私の責任です』という承諾書にサインをし、手袋を探しに街の衣料品店へ走った。

 






コスタ・デル・ピーノの鉱山入口からは、モンブランとグラン・パラディーゾの大パノラマも楽しめる(上)。コーニュから1時間強のハイキングで入り口まで。登りが辛い人のために、別料金で車の送迎も手配してくれる(中)。鉱夫たちは下の街と採掘場の間をこのケーブルカーで移動していた(下)。