映画に読書に、秋の夜長を楽しめる娯楽が増えて、モノトーンだった日常がだんだんカラフルになってきた。最近では、その彩りをさらに豊かにする野外メシのイベントもあちこちで開かれるようになってきた。昨年はコロナ感染拡大の影響でほとんど全てが中止された秋の収穫祭だったが、今年はイタリア各地で食イベントが復活した。我が家の近所でも、ビールフェスティバル、バッカラ祭り、ストリートフード・ナイトなど、昨年の空白を埋めるかのように大小様々な食イベントが開催され、どこも大盛況となっている。
 星空を見上げながら、野外で楽しむ食事は大人も子どもも大好きなイベント。料理そのものは定番の家庭料理のようなものがほとんどで、とびきり贅沢なご馳走というわけではないのだが、慣れ親しんだ料理でも、野外で大勢で食べるとまた格別の味わいがある。先日、夜の散歩がてら足を運んだ地域の若者グループが主催するチャリティー・ディナーもそうだった。メニューはパスタと鶏肉の煮込み、付け合わせ野菜というシンプルなものだったが、野外テーブルで見知らぬ人たちに囲まれながら、にぎやかな笑い声をBGMにいただく食事は開放感に満ちていた。
 

 映画も読書も野外メシも、特別贅沢な娯楽ではない。けれど、あって当たり前と思っていた日常の中のささやかな楽しみは、一度失ってみるとそれがいかに大切だったかが身に沁みてわかるようになる。本格的な寒さがやってくるまでには、まだ少し時間がある。短くも貴重な秋のイベントの数々を見逃さずに、心ゆくまで楽しませてもらおうと思う。

 

星空の下に並べられたテーブル。人数はまだ限られているものの、見知らぬ人と隣り合わせに座って同じ料理を食べるだけで特別なディナーになる。 
ひよこ豆のペーストを塗った前菜のパンと、シチリア料理の代表パスタ・アッラ・ノルマ。涼しい夜風に吹かれながら食べると、ひときわ美味しく感じる。