文と写真・サラーム海上

 

遠路はるばる、アビジャンの舞台芸術祭へ

 

 2020年3月7日金曜夜22時、コートジボワールのアビジャン・フェリックス・ウッフェ・ボワニ国際空港に到着した。新型コロナウィルスの影響でガラガラの成田空港からエールフランスで13時間かけてパリに飛び、そこからさらに6時間のフライトでアビジャンにたどり着いたのだ。

 

エールフランスで一路パリへ。窓からは冬の富士山がくっきりと

パリのシャルル・ド・ゴール空港の非シェンゲン協定エリア行きターミナルはこんなにガラガラだった

 パリのシャルル・ド・ゴール空港も成田空港同様にガラガラだったが、アビジャン行きの飛行機はほぼ満員だった。アビジャン到着後は入国審査の前に臨時の検疫のブースが作られ、白衣に医療用のマスクとゴーグル、ビニール手袋をした係員たちが旅客の一人一人の額の熱を測り、それを書類に書き込んでからやっと入国審査の運びだ。

 

 一時間半もかかって入国を済ませ、荷物を受け取り、出口に向かうと、『MASA』(二年に一度開催されるアビジャン舞台芸術祭)のプレートを持った若い女性が立っていた。

 「日本から来たサラームです」

 「アビジャンへ、MASAへようこそ。ホテルまで車を用意しています。その前にまず現金とスマートフォンのSIMを手に入れて下さい」

 係の女性の周りに立っていた二人の若者が僕のスーツケースを運び、まず銀行のATMへ、続いて携帯電話の通信会社のブースに案内してくれた。スマホの言語を日本語からフランス語に切り替えて彼らにわたすと、慣れた手付きでSIMを差し替え、面倒そうな設定をチャチャっと行って、その場で回線が開通した。これで滞在中は常時ネット接続出来る。

 「SIMカードと9GBのパケット料金を合わせて15,000CFA(約2,800円)です」

 「早い! 親切にありがとう」

 「貴方のお役に立てて何よりです。よろしかったら、手伝ったみんなのコーヒー代をいただけませんか?」

 

 なるほど、彼らはMASAの係員や通信会社の店員ではなく、小遣い稼ぎの一般人だったのね。これは着いた早々に一本取られたなあ。インドやモロッコでは、こうした輩の手は一切借りないことにしているが、彼らのおかげで面倒な手間が省けたのだから、お駄賃を多めに渡してもいいかな……初めてのアフリカで気分が高揚しているせいか、それとも疲れ切って面倒を避けたいのか、僕にしては珍しくおおらかな気分だ。

 空港から出ると、むせ返るような暑さ。夜なのに27~28度はありそうだ。真冬の東京から来たので、身体を合わせるのが大変だ。ジャケットを脱いでTシャツ姿になりたいが、一月前に東京の検疫所で「半袖になってはいけません! 蚊に刺されるとマラリアの危険があります」と念を押されていた。

 

 ホテルの車を待つ間にMASAの係員から、同じ飛行機でパリから到着した背の高い年配のフランス人男性ドミニクさんを紹介された。

 「私はジャーナリストだが、70歳の今は隠居の身さ。しかし、若い頃から西アフリカ諸国と縁があり、セネガルのダカールに暮らし、40歳を過ぎてからフランス語のアフリカ社会派雑誌『Jeune Afrique(若いアフリカ)』の編集長を務めた。隠居した今もアフリカの政治や社会、文化について執筆しているんだ。MASAに来るのは三度目だ。君はサブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ大陸を指す言葉、北アフリカ以外のアフリカ全土が含まれる)は初めてかね。それならアビジャンは理想的な入り口だよ。なに? マラリアの蚊だって? 今は乾季だからそんなのいやしないさ」

 ホテルはアビジャンの行政機関が集まるプラトー地区にあり、空港からはたった15分の距離。ドミニクさんの身の上話を聴いているうちにいつの間にか到着してしまった。

 

 1962年にアビジャンで最初に建ったという三ツ星ホテル『ル・グラン・ドテル』にチェックイン。ダブルサイズのベッドが置かれた部屋は狭くもないが、広くもなく、テラスからは広い中庭が見えるだけの殺風景な三ツ星だ。そして冷房の初期設定温度は17℃……。荷物を広げ、シャワーを浴び、ベッドに横になると、時刻は3月7日の午前1時すぎ。日本との時差は9時間なので、日本は朝の10時か。自宅を出たのが前日の午前6時前だったから、ここまで28時間かかった……フ~お疲れ様でした。

 

夜中のアビジャン・フェリックス・ウッフェ・ボワニ国際空港。暑いし、ムワ~っと湿度も高い!

Grand Hotel d'Abidjanのスタンダードルーム。プールこそないが、清潔で冷房もWifiも完備なので、アビジャン出張にはおすすめ
Grand Hotel d'Abidjanの部屋のテラスからは中庭。反対側の部屋はラグーンが見渡せて、見晴らしこそ良いが、MASAの音楽演奏が夜通し鳴り響き、安眠出来ないとのことww

 3月8日土曜、本日からMASAがスタートだ。午後2時からアビジャンの北に広がるベッドタウン、アボボの市役所前広場で行われるパレードがグランドオープニングとのことで、午後1時半にドミニクさんと一緒にタクシーに乗り、アボボに向かった。