結局、若手ショーケースライブは予定の一時間半後に始まった。まだまだ個性を出せていない新人も多かったが、今まであまり聞いたことのなかったタイプのアフリカ音楽を演奏するアーティストたちも目立った。中でも「クンデの女王」を自称するマリ人女性Kalamは衝撃的だった。
 網笠と覆面を被り、顔を隠したまま、三味線のような弦楽器クンデを弾き、左足で瓢箪製のパーカッション、カラバシュをバスドラムのように蹴りながら歌うのだ。バンドメンバーが弾くクンデと彼女のクンデ、ドラムスと彼女のカラバシュがポリリズミックに重なりあい、モロッコの伝統音楽グナワとマリの狩人の歌が混じったようなトランシーな音楽だ。これはいい。後ろを振り向くと、野原の観客席はいつのまにか埋まり、立ち上がって踊り出す若者たちもいて、深夜の大会場以上に盛り上がっていた。

 

真夜中のメイン会場で見たベナンの大物歌手ジョスピント。ヴォドゥン的な曲とサルサを歌い分ける

飛行機の前に組まれた若手アーティストたちによるショーケースのステージ

ショーケースに登場した地元のR&B女性歌手Elodie。最初は暑苦しいフレンチR&Bだったが、次の曲からはルンバ調。今時のアフリカンディーヴァだ

顔を隠したマリのダイナマイト歌手Kalam。顔を隠すのはイスラーム教徒の既婚女性に伝わる習慣だが、彼女は音楽と結婚し、更に女性が演奏することが禁じられていた楽器クンデと結婚したことを示すために顔を隠しているそう

演奏終了後、ファンと記念撮影するKalam

 夜9時すぎ、突如土砂降りのスコールが降り、15分ほどでパタっと止んだ。すると湿度がぐっと上がった。今度はトーゴのアフロ・デスメタル・バンドArka'nを観るためトレーシュヴィル地区のど真ん中にあるライブハウスへ向かった。

 到着した途端、Arka'nの演奏がちょうど始まった。エレキギター、ヴォーカル、ドラムス、エレキベース、パーカッションの5人編成で、アメリカのリンキン・パークのようなオルタナティヴヘビーメタルに、ヴォドゥンの儀式音楽に用いられるポリリズムをミックスしたアフリカ色が強いサウンドだ。

 メンバーは白いボディペインティングを施し、見た目もヴォドゥン=ヴードゥー的。ファンキーなリズムと複雑なポリリズムを使い分け、ギターが金切り声をあげ、デスボイスが喚き立てる。こんなアフリカ音楽があるとは想定外だった! 僕は昔からヘビーメタルだけは基本的に聞かず嫌いをしてしまっているのだが、オリジナルな世界観を持つ彼らのことは一発で好きになってしまった。実は彼らは日本のTV番組『タモリ倶楽部』のアフリカのデスメタルバンド特集で紹介され、番組内で第二位に選ばれてもいたのだった。

 

Arka'n バンド名は「見えない世界」を意味し、この世とは違う世界の音楽を目指しているそう