文と写真・サラーム海上

 

■アビジャン滞在8日間で印象に残ったこと

 

 3月8日から8日間にわたり開催されたアビジャン舞台芸術見本市、通称「MASA」の取材、最初は8日ぶっつづけのアフリカ芸術見本市なんて気が遠くなりそう……と思ったが、いざ始まると毎日があっという間に過ぎていった。

 

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真夜中の冷房効きすぎのホールで観たブルキナファソのMamadou Diabate & Percussion Mania

tabilistamasa4揃いの民族衣装でバッチリきめたMASAの受付の女性たち

tabilistamasa4MASAのスピードミーティング。アーティストはもちろん、マネージャーやアフリカ各地のプロモーター、さらに欧米からのプロモーターが揃い、それぞれに打ち合わせや商談を行っていた

tabilistamasa4カメルーンの女性歌手クリスティアーヌ・ムコリー

 

 3月12日木曜は二日前の晩に見て、一発で好きになったトーゴのアフロ・デスメタル・バンドArka'nのメンバーにインタビューを行った。

 Arka'nのリーダーでギタリストのRock Ahaviは1980年にトーゴの田舎町アグーニョグボに生まれた。子供の頃から西洋クラシックのピアノを習っていたが、十代になってギターを弾き始め、ロックやブルース、同時にアフリカ音楽に傾倒した。そして、ジミ・ヘンドリクスやリンキン・パークを知り、次第にヘビーメタルに向かっていった。2010年頃にArka'nをスタートしたが、メンバーがなかなか固まらなかった。2016年になって、今のメンバーが揃い、バンドとして正式に活動を始めた。以来、トーゴを中心に西部、南部、東部アフリカまで演奏活動を行っているという。

 

 「アフリカでヘビーメタルは人気がないのは、単純にヘビーメタルを聴く機会もなく、全く知られていないからだと思う。僕たちの演奏を聴いた人は、ヘビーメタルを好きになり、もっと知りたいと言ってくれるからね。
 今のところトーゴのヘビーメタルのバンドは僕たちだけだ。しかし、ヘビーメタルのバンドはアフリカ全土に存在していて、特に南アフリカはシーンが強い。僕たちはそうした横の繋がりを大切にしているんだ。
 Arka'nを始めた頃はアメリカのリンキン・パークのような音を目指していた。でも今のメンバーになり、次第にアフリカ色、ヴォドゥン=ヴードゥーの色を強めていったんだ。
 Arka'nというバンド名は「見えない世界」を意味する。僕たちは目に見えない世界、この世とは違う世界の音楽を目指しているんだよ。
 僕たちは、日本のテレビ番組(タモリ倶楽部)でアフリカのヘビーメタルのNo2に選ばれたことがある。あるとき日本人から「貴方達のバンドをNo.2に選びました」と突然メールが来たんだ。うれしかったよ。そして、日本にはヘビーメタルのぶ厚いファンベースが存在していることを初めて知った。いつか日本に行くのが僕たちの夢さ」

 

 音を通じて目に見えない世界を表現するというのは精霊信仰であるヴォドゥン=ヴードゥー的だ。それにしてもヘビーメタルには世界中どこに行っても、一種厨二病的とでも言いたいファンタジーの世界観が広まっている。北欧のヘビーメタルはバイキングや反キリスト教と、インドでは古代神話と、ブラジルでは民間信仰のカンドンブレ、モンゴルではシャーマニズムと結びつくことが多い。

 それでもこれまで普通の英米のヘビーメタルに全く興味を持てずにいた僕が、Arka'nは即座に好きになった。それはちょうど普通のアメリカや日本のジャズに長い間全く興味を持てなかった僕が、ブラジルやキューバやイスラエルやトルコやアルメニアやポーランドのジャズを知り、初めてジャズを好きになれたのと同じことだ。先入観による聞かず嫌いは良くない! メタルファンの間では「ペイガン(異教)メタル」というサブジャンル名で呼ばれるこうした世界の辺境のヘビーメタルを今後は注目していきたい。

 

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約束の時間を2時間遅れてやってきたArka'nのメンバー。中央がRock