文・写真/室橋裕和

 

 4度目の緊急事態宣言が明けた10月2日、名古屋市港区。地下鉄東海通駅のそばにあるマンモス団地群「九番団地」は、コロナ禍以降の久しぶりのイベントに沸いていた。広場に停まったキッチンカ―は、ケバブにインド料理、台湾料理やかき氷と、多国籍だ。広場を見守るように、ベトナムのランタンが灯っている。

 食べ歩きを楽しんでいるのも、日本人や中国人、ベトナム人、それにブラジル人などさまざまな顔触れだ。子供たちは会場内に設置された謎解きゲームに夢中になっているが、やはりその顔立ちや目の色も異なる。

 キッチンカーのほかに出店もいくつかあった。ベトナムの店でバインミー(サンドイッチ)を買ってみると、これがなかなかにいける。店主のベトナム人女性に話しかけてみると、団地内のモールにある、ベトナムレストラン&食材店の人々だった。

 「6月にオープンしたばかりなんです」

 もともとは技能実習生を日本に派遣する送り出し機関の仕事をしていたという。その駐在員として東海地方にある監理団体で働いていたが、退職して独立開業。コロナ禍でのスタートはなかなかにたいへんそうだが、

 「食材のデリバリーでなんとか」

 と笑う。そんな彼女だが、お客にバインミーを売りつつ、傍らにいるおばちゃんとなにやら中国語でべらべらやりあっているのだ。気になったので聞いてみると、

 「あ、私は台湾で働いていたこともあるんです。そのときに中国語を覚えて」

 九番団地に出店してから、近くに住んでいる台湾人のおばちゃんと仲良くなり、今回も一緒に出店したのだという。おばちゃんのほうは台湾のパイナップルケーキやらタピオカティーを売っていて、こちらもなかなか盛況だ。

 まるで僕の住む東京新大久保のような多民族混在ぶりだが、これこそが僕にとっての名古屋の面白さだ。

 

名古屋市港区の九番団地で開かれたイベント「九番市場」。入念な感染対策を施しての実施となった