中国人観光客で賑わうミャンマー国境

 もうひとつの目的が、ミャンマー国境だ。景洪からは、シーサンパンナのかつての版図に街道が延びている。僕がやってきたラオスだけでなく、いくつもの道が国境を越えてミャンマーへと続いているのだ。

 多くは外国人の通過できない場所だが、国境市で賑わっている場所もあるようだ。そのうちのひとつ、打洛(ダールオ)にまずは行ってみることにした。景洪からはバスで3時間ほどだ。

 打洛のバスターミナルでは、何人かのバイクタクシーが出迎えてくれた。もちろん中国語なので、さっぱりわからない。

 そこでノートを広げて、「口岸」と書いてみる。国境を意味する中国語だ。彼らは仲間同士で頷きあう。ひとりがペンとノートを貸せとジャスチャーする。「口岸」から矢印を引き「2公里」と書き、バイクの後部座席をばんばん叩く。

〝国境まで2キロあるから、乗ってけや〟

 中国人はせっかちに見えて、意外に筆談に応じてくれる。そして誰しもが整った、きれいな漢字を書くのだ。

 

バイクタクシーに揺られてミャンマー国境を目指す

 バイクにまたがり田園地帯を走っていくと、確かに2キロほどで建物の群れが見えてきた。右に左に商店やレストラン、土産物屋などが現れ、そぞろ歩く人々の流れを避けながら、バイクは低速で進む。大型の観光バスがずらりと並ぶ駐車場。交通誘導する係員。これ、本当に国境なんだろうか。

 しかし、促されてバイクを降りた目の前にそびえるのは、紛れもなく中国側国境ゲート。改修中ではあったが、立派な三角屋根を持つインドシナへの、ミャンマーへの門だ。

 イミグレーションを前にすると、中国人観光客たちが、いっせいに歓声を上げるのだ。マニアの僕よりも興奮気味にゲートを指差して目を丸くし、写真を撮りまくり、自撮り棒を構える。ツアーご一行の横断幕を広げて、国境の前で記念撮影だ。

 「これが国境なのか」と感慨深げに眺める彼らを見て、そうか、と思った。いくつもの国と長大な国境線を接する中国だが、内陸部や、太平洋沿岸部に暮らす数億の人々にしてみれば、国境という存在はあまりに遠い。国土が広すぎて、その辺縁に暮らす人々以外は、隣国が地続きであることを意識しづらいのかもしれない。そんな彼らにとっては、僕と同様に、国境が観光ポイントになるほど珍しくて興味深いのだ。

 

国境ゲートをバックに撮影。中国人はこんなスタイルのツアーが大好きだ