文と写真・室橋裕和

 

日本とラオスのはじめての合作映画として封切られた『ラオス 竜の奇跡』が好評だ。そのストーリーの核となっているナムグム・ダムとはどんな場所なのか。実際に訪れてみよう。

 

■現地に溶け込んでの体当たりロケ

「ラオスって、どんな国なんだろう。なにがあるんだろう。撮影前は、東南アジアのどこか、くらいの印象しかなかったんです」

 と『ラオス 竜の奇跡』主演の井上雄太さんは語る。それがいまでは流暢にラオス語を操り、ほかの俳優やスタッフたちとも談笑する。日本でラオス語の特訓を受け、ラオスでもまず1か月ほどのホームステイをしてから望んだロケ。台本のほとんどはラオス語だ。海外ロケならではの苦労も多いが、

 

「ラオスの俳優さんたちは、シリアスな場面でも本番直前までリラックスしている。切り替えがうまい。それを見習って、緊張をためないようにしています」

 と、ラオス流の演技術も取り入れているようだ。

 日本とラオスの、史上初の合作映画である『ラオス 竜の奇跡』。その主役に抜擢された井上さんは、はじめて訪れたラオスで、中部の村に長期滞在し、まさに体当たりのロケに挑んでいた。なじみのなかったラオス料理もすっかりお気に入りだ。

 「焼いたなまずと、カオニャオ(もち米)を買ってきて朝ごはんにすることが多いですね。カオニャオのおいしさはラオスに来て良かったと思うことのひとつ。辛いものはまだ苦手ですが、ラープ(肉とハーブのサラダ)は好きです」

 

 浅黒く日焼けし、精悍な顔つきでラオスの農民服を着こなす井上さんの役どころは、日本人の技師・川井だ。時は1960年代。ラオスにはダム工事のためにやってきたのだが、河を測量中にボートが転覆、とある村にひとり迷い込んでしまう。

 そこへ、現代のラオスからタイムスリップしてきた女性ノイも現れる。生きる国も時代も違うふたりが、ラオスの穏やかで豊かな自然に包まれた村でふれあい、ときに価値観をぶつけあい、心を通じ合わせていく。

 

映画「ラオス 竜の奇跡」より Japan-Laos Creative Partners

■日本人技術者の思いがこもったダム

 劇中でいちばん印象的かつ、難しかったと井上さんが語るシーンがある。村の学校を訪れて、子供たちに語りかける場面だ。

「20人ほどのエキストラの子供たちを前にして話すのですが、とにかくセリフが長くて(笑)。もちろんラオス語です。人の心に届くように気持ちを込め、演技をしながらなので、たいへんでした。でも、注目してほしいところであります」

 そのシーンで井上さん演じる川井が訴えたこと……それが物語の核にもなっている。語られるのはラオスの未来だ。川井は技師として、ラオスに未来をつくるナムグム・ダムを建設するために、やってきたのだ。ダムを建設し、水力発電が軌道に乗れば、ラオスは大きな輸出産業を持てるようになる……。

 そのナムグム・ダムは、いまも力強く稼動し、電力を生み出している。ロケ地のあるタラートの町から、トゥクトゥクで20分ほど。湖から流れ出ている河をさかのぼり、ジャングルの中を進んでいくと、とつぜんに巨大構造物が現れる。

 近づいていくと、その大きさに圧倒される。のしかかるような高さと、重厚さ。こんなでっかいものを、50年も前に日本人が先頭になってつくったのだ。

 

日本の技術も込められているナムグム・ダム。このダムの発電によってラオスは外貨を得ている