文と写真・室橋裕和

 

これまでにどれだけ海外旅行を重ねてきたのか。どのくらいの回数、日本を出入国してきたのか。法務省ではそんな情報を開示してくれる制度がある。数字にもこだわりたい旅マニアとしては、これは申請するしかないだろう。

 

■霞が関の中心に挑む

 千代田区霞が関1-1-1。どうだといわんばかりのアドレスに周囲を圧してそびえる法務省。周囲には警視庁、警察庁、検察庁などもある、まさに日本の司法の中心地といえる。

 それだけに警備も厳重で、至るところに警官が配置され、怪しい者がいないか目を光らせている。恥ずかしながら僕はアラフォー独身フリーの出版稼業、平日昼間に汚い格好で官庁街をうろつく姿はどう見たって立派な不審者であろう。職務質問されるんじゃないか、テロ容疑で捕まるんじゃないかと、やましいこともないくせにビクビクしていたのだが、どうにか厳しい警備をくぐりぬけた。

 

 なんでまた法務省なんぞに来たのかというと、「出入(帰)国記録に係る開示請求」をするためである。これまでの日本の出入国の記録を、すべてデータ化していただけるのだ。

 今年の夏場にツイッターやまとめサイトで局所的に盛り上がり、旅マニアの間で話題になった。僕もいったい、日本をどのくらいの回数出入りし、またどのくらいの年月を海外で過ごしているのか知りたく、ふだんは足を踏み入れることもない霞が関にやってきたというわけだ。

 

■開示請求費用は400円 (2017年12月)

 空港のごとき金属探知機ゲートに出迎えられ、手荷物を検査されると、正面にいる受付嬢から誰何の声がかかる。お前は何者でいったいどこの部署に行くのか。はじめにここで申告しないと館内を歩けない仕組みになっていた。よけいなことはさせない、目的の場所以外には行かせない、そんな強い意志を感じる。
 入館バッジをありがたく押し戴いて、指定された個人情報保護窓口に向かうと、そこにはすでに先客がいた。なにやらぶつぶつと係員に「出入国の……」なんて話しているので、僕と同類のマニアだろう。なぜだか悔しさを感じてしまう。

 申請にあたっては料金400円が必要だ。これは300円分の収入印紙と、出入国記録の郵送代である。地下にある古めかしい売店で収入印紙を買い求め、身分証明書、申請用紙を添えて窓口に提出する。淡々とメカのように書類を処理していくお役人さまにちょっと聞いてみた。

「この手続きする人、最近増えてませんか?」

 が、

「そういえば、多いかもしれませんね」

 と、目も合わさずしめやかに呟くのみ。

「ネットでちょっと話題になってるんですよ」

「あ、そうですか」

 あくまでそっけない。下々の者とは極力会話をせぬように、なんてお達しが出ているのかもしれない。極めて無機質な法務省ツアーなのであった。