文と写真/室橋裕和

 

原油や天然ガスの巨大回廊ともいえるマラッカ海峡。この海を越えて、マレーシアの古都マラッカからインドネシア・スマトラ島へ。しかしフェリーに乗って海峡を越えた先には、石油産業が落とす影もまた色濃く染みついているのだった。

 

■「タンカー銀座」を横断し、オイルの街に上陸

 出航から2時間ほどが経ったろうか。

 マレーシアのマラッカを発った我がフェリー「インドマル号」は、マラッカ海峡を西へと進んでいた。幅60~70キロという狭い海峡だけに、常に視界のどこかに陸地が見えており、大海原という感じはない。右に左に大型船舶が行き過ぎる。ここはインド洋と太平洋を最短距離でつなぐ海の大動脈のため、交通量は多い。

 その多くは遠目にも威容を感じさせるタンカーだ。人間のあらゆる工業的活動の原材料たる天然資源が、地球の各地に運ばれてゆく。ここはまさに世界経済の要だぜ……シブく船窓に広がるタンカー銀座を見つめていると、彼方に見えていた陸地が次第に近づいてきた。インドネシア・スマトラ島である。

 

 ジャングルの合間に銀色の構造物が点在する港だった。いくつもの巨大な油槽が並び、火を噴くパイプが天を突く。このスマトラ島でもまた、原油や天然ガスが採掘されているという。

 とくに中部にあるミナス油田はインドネシア最大といわれている。ほかにいくつもの油田があり、その積み出し港として賑わうドゥマイの街に、インドマル号は着岸した。時計の針を1時間戻す。ようし、上陸だ。

 しかし、港はガランとしており活気もない。ほかの埠頭には大型タンカーなどさまざまな船が接岸し、作業員たちが慌しく行き交っているのだが、この埠頭だけは静かなのだ。ドゥマイの港で、客船はオマケにすぎないようだった。主役はあくまで資源なのだ。

 

マラッカ海峡を横断し、たどりついたスマトラ島で出迎えてくれたのは石油関連のプラント群だった