文と写真・室橋裕和

 

仕事抜きで、取材もせずに観光旅行に訪れたイランで待ち受けていたのは、大規模な反政府デモだった。危険を避けるために向かったのは、イラクとの国境地帯だったが……
 

2017年末、イラン反政府デモに遭遇

 僕は目を疑った。

 ホテルの前が、火の海になっているではないか。目を血走らせた若い連中がドラム缶を燃やし、車をひっくり返して火をつけ、そこらの標識を折り曲げて回り、シャッターを下ろした商店にケリをくれながら、雄たけび、練り歩いている。数百人だろうか。もっといるかもしれない。青くなって外へ出ると、ホテルの3軒隣にあるバザールの入口のゲートがやはり燃やされ、黒炎を上げている。

 自らの街が炎上する様子を、うっとりと眺めているデモ隊に向けて「ポン、ポン、ポン」となにやら発射音がした。黒焦げたアスファルトに、いくつかの鉄製の筒がカラカラと転がる。見る間に煙が吹き出てくる。とたんにあちこちから悲鳴が上がった。僕も煙に巻かれたが、声も出せず、顔を両手で覆った。目が、なんだ、痛い、いや辛い。目が激辛だ。涙があふれる。視界が利かず、よろめきながらホテルに逃げ込んだ。生まれてはじめて浴びた催涙弾の刺激に悶えながら、この街から逃げようと思った。

 

泊まっていたホテル周辺のバザールは暴徒と化したデモ隊によって放火されまくった