国境が開くその日まで

 僕は憑かれたようにロンワ村を探検し、歩き回った。ほれインド。よしミャンマー。またインドに入っちゃうぞ。軽快なステップで国境をまたぎ、飛び、ロンワの人々を不審がらせた。

 その昔、国と国との境い目なんて、このくらいザックリしたものだったと思うのだ。パスポートとネットワークで国境が管理され始めるのは20世紀に入ってからのことである。つまり僕は、少なくとも100年以上前の国境の姿をいま見ている……。

 ああっ、このまま近代国家の戒めを破り、ヤンゴンまで行ってしまいたい。ナガの人々と同じように国境を無視してミャンマーを旅したい衝動にかられる。そしてたぶん、それは可能だろう。うまくすればヤンゴンまで行けるような気もするが、自重しておいた。

 いつの日かここも、正式にイミグレーションが開設され、国際国境となるだろう。その日にとっておくのだ。

 教会のほかにもうひとつ、国境線をまたいでいる建物がある。ホールと呼ばれている。ナガの木造藁葺き民家をそのまま100倍にしたような巨大さで、目の前には芝生が広がる。祭りや集会などはすべてここで行われるのだ。なんだか古代遺跡のような迫力にも満ちている。インドもミャンマーもなく、このホールにナガ族の人々は集まってくる。

 ナガランドとはもしかして、一大観光資源ではないのだろうか。美しい原初の自然、タイムカプセルのように保存されてきた文化。タイ北部やラオスでは少数民族の村を外国人がトレッキングし、伝統的な織物や雑貨を買い求め、土地の文化を体験する旅が人気だ。それ以上のポテンシャルをナガランドは秘めているようにも思った。これはひょっとすると、面白いことになるかもしれない。近い将来、ナガランドは大きな注目を集めるのではないだろうか。

 

ロンワ村の中心に立つホール。周囲には伝統工芸の品々なども飾られている

 

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日本の異国: 在日外国人の知られざる日常
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もはや移民大国。激変を続ける「日本の中の外国」の今を切りとる、異文化ルポ。竹ノ塚リトル・マニラ、ヤシオスタン、大和市いちょう団地、茗荷谷シーク寺院、東京ジャーミィ、西川口中国人コミュニティ、そして新大久保ほか。2017年末で250万人を超えたという海外からの日本移住者。留学生や観光客などの中期滞在者を含めれば、その数は何倍にも