文と写真・室橋裕和

タイミャンマーラオスが接するポイント、ゴールデン・トライアングル。そこは「国境テーマパーク」ともいうべき場所であった。メコンをボートで行き来し、ミャンマーに接近しラオスに上陸する。誰でも簡単・手軽に国境体験が楽しめる観光地となっているのだ。

 

■3国を見晴らす場所に立つ

 アクセルを絞る。風景が流れていく。右手は滔々たるメコンの流れなのである。その向こう、対岸にはラオスの大地が広がっている。国境に沿ってバイクで走っているのだ。僕にとってはどんなツーリングルートよりも胸躍る道といえる。

 静かに鳴動するメコンの両サイドは森や畑が広がるばかりだったが、突如として建物が増え、市場が広がり、開かれた駐車場にはツアーバスまで停まっているではないか。小高い丘の上には黄金の仏像が鎮座している。ここだろう。僕も駐車場にバイクを乗り入れた。

 

 このポイントがゴールデン・トライアングルの中心地らしい。なかなか賑やかな観光地じゃないか。その昔はここでも、アヘンの売人なんかがいたのだろうか。メコンを越えてヤクを密輸する人々がはびこっていたのだろうか。少なくとも表向きは、この地域でのケシ(と、ケシから製造されるアヘン、ヘロイン)の生産量は激減した。アメリカはじめ国際社会の圧力が高まったからだ。とくにタイ側では「オピウム(アヘン)博物館」なる施設もあるほどで、麻薬で名を馳せた時代は過去に封じたいという意思を感じる。ミャンマーではケシはまだ一大ビジネスとなっているようだが、少なくともタイは、ここを観光地化するほど健全になっている。

 ゴールデン・トライアングルTシャツを売る屋台に観光客が群がり、かのインペリアルやアナンタラといった高級ホテルまで並ぶ。メコンを望むレストランはタイ人で混み合っている。もちろん大麻入りジュースなんか売っているわけではない。そして博物館の近くから小さな山を登っていくと、こちらにも寺があり、境内の奥に向かえば……ぱっと視界が開けた。

 

 メコンと大地とが、はるか眼下だ。そして見よ、手前は我らがタイランド、左手に浮かぶ岬のような突端はミャンマー領、右手の河岸はラオスなのである。まさしくゴールデン・トライアングル。一度は見たかった光景だ。この美しき三角形を見ているほうが、ケシよりもはるかにキマるではないか……。僕は小一時間も、3国とメコンとを眺め続けた。まるで天下を取ったような気分だ。

 

ベタだがやっぱり感動するゴールデン・トライアングルの図。世界的にもレアなポイントだ

オピウム博物館の展示のひとつ。昔はこうしてアヘンをキメるダメ人間がたくさんいたらしい

■メコン河をぶっ飛ばせ!

 さて、次なるアクティビティはいよいよ、ボートでのメコン国境トリップであろう。仏像周辺の土産物屋タウンのあちこちには、ツアーをアレンジする小さなブースがあって、観光客がわいわいやっている。

 目的地はふたつだ。ミャンマーか、ラオスか。このポイントには行き先によってイミグレーションも2か所、設置されている。これもまたレアである。とりあえずミャンマー行きのイミグレで話を聞いてみると、

 「行けるのはカジノだけだ。ミャンマー領に2軒のカジノがあるけど、つまんねえぞ」

 と興ざめするようなことを言う。うるせえな、こちとら国境越えることに意味があんだよ……が、カジノだけではなあ。確かにタイ人客も少ない。

 では、と「ラオスツアー」のブースへ。こちらでは、メコンを遊覧しつつ、ミャンマー領にも最接近し、それからラオス側に上陸できるという。市場があり、ラオスの物産が人気なのだとか。

 「あんたひとりなら、小さいボートで500バーツ(約1700円)でええよ」と業者のオヤジ。よし。こっちにしよう。

 パスポートはタイ側のイミグレ預かりとなる。ラオス側に出入国を管理する場所はないのだ。あくまで一時的に、観光客が両国に便宜を図っているということなのだろう。パスポートなしで国境越えに挑むのだ。

 

左手はタイで仏像がそびえる。右側はラオスで金色の建物はイミグレーション。そして奥に進むとミャンマー

ゴールデン・トライアングルの様子。ボートツアーのおじさんを待つ間にメコン沿いをうろうろする