文と写真・室橋裕和

 

 

メコン河を挟んで対岸にラオスを望むカンボジアの小さな村、カンポン・スララウ。向こう側に行きたいところではあるが、このポイントでメコンを渡河できるのは地元住民のみ。外国人には許可されていないのだ。そこで陸路でラオスを目指すことにしたのだが……。

 

バスがなくてもクルマをチャーターすればいい

 寝坊して、1日1本の乗り合いバスを逃してしまった。

 が、東南アジアの僻地においては、公共交通がすべてではないことを僕は知っている。そこらの人に頼んでクルマを出してもらうという手があるのだ。これはイナカに行くほど有効だった。バスなどの便が乏しい村でも、もちろんお金次第ではあるのだが、クルマを提供してくれてドライバーをかって出る人が現れるものなのだ。そこでまずは宿の娘に聞いてみたのだが、困った顔をする。

 「みんなバイクしか持ってないし……どこまで行くの?」
 「ラオス」
 「なら目の前やん。フネで渡ればすぐだよ」
 「いや、外国人はダメなんだ。ちゃんとパスポートにハンコくれるとこ」
 ポン、とスタンプを押すしぐさを見せるのだが、
 「よくわからないけど、外国人でも誰でも行けるよ。向こうにも知り合いや親戚いるし。うちもフネあるし、出そうか?」

 おそらく彼女の言うとおり、この国境はこっそり突破できるに違いない。パスポートチェックを受けることなくメコンを渡ってラオスに上陸し、そのままビエンチャンまでたぶん行ける。だがそれを世間では密入国と言うのである。村娘の感覚が生活者としては正しいのだろうけれど、現代社会では国境通過にあたってはシビアなルールを守らなくてはならない。カンボジア人とラオス人以外の人間でも通過できる、国際国境に行く必要があった。

 どうにも腑に落ちない様子だったが、彼女があちこちに電話やらフェイスブックやらで聞きまわってくれたおかげで、どうにかおんぼろのセダンが見つかった。30歳くらいの兄ちゃんが、友達をつれてやってきたのだ。クルマの年代はわからないが恐ろしく古く、サビだらけで土ぼこりにまみれてはいるが、この赤土広がるバス便も乏しい大地では頼もしく見える。
 さっそく地図を広げて、聞いてみる。

 

 

目的地はラオス領に入ったデット島。そこまでどんなルートをたどって行くのだろうか