まずは目指せストゥントレン

 「いまここでしょ、カンポン・スララウ。で、外国人も通過できる国境は、このストゥントレンの北」
 「そうそう、ここ。外国人はこっちに行かないと」
 と、ほかの村人よりは国境越えの国際ルールを知っていそうだ。

 「ほかに、この近くにないの? 外国人OKの国境」
 僕の目的地は、目の前のメコン河なのである。広大な中州に島々が浮かぶ景勝地シーパンドンに渡りたいのだ。さしあたりデッド島あたりだろうか。ラオス側にあるのだけれど、で渡れば確かにすぐそこなのだ。だがそれは外国人には許されていない。

 となれば、ここからストゥントレンまで南下して、また北上してラオスを目指すV字コースとなる。だが、時間もかかるしそのぶんチャーター代も高くつこう。

 ほかに外国人にも開放されたイミグレーション・ポイントはないのだろうか。あるいは、国際国境までストゥントレンを経由せずに、V字ではなく直線的に向かうショートカットコースはないものか。

 「うーん……いくつかメコン河を渡ってラオスに行ける場所はあるけど、外国人はダメじゃないかなあ。それと、国境になってるメコン河はカンボジアにぐいって入ってくるだろ」

 僕のスマホを拡大する。

 「川幅が広いんだ。このあたりでメコン河を越えられる橋があるのは、ストゥントレンだけ。だから時間をかけて、まずストゥントレンに出なくちゃならない」

 やはりそういうことか。仕方がないが、トラクターとバイクばかりのこの村でクルマを捕まえられただけでも幸運なのだ。ともかくルートは決まった。

 恐る恐る値段を聞いてみると、彼は申し訳なさそうに「100ドル」と言う。かなり高いと思うのだ。僕はその半額程度を予想していた。しかし、
 「この村はガソリンが高い。それに、帰りのぶんのガソリンだって必要だし」
 確かにカンポン・スララウにガソリンスタンドは見当たらなかった。大きなドラム缶にポンプを取りつけたものが雑貨屋の軒先にあるだけだ。きっとほかの地域から運んできたもので、その輸送費や人件費も上乗せされているのだろう。

 

 「あと、俺のほかにこいつにも日当を払ってやってほしいから」
 えへへ、とツレの男がひょっこり顔を出す。
 「こいつが一緒じゃないと、俺は行かない。いくら積まれても行かないよ」
 どうして……と聞いてみると、
 「もしふたりで行って、あんたを国境で下ろしたら、帰りは俺ひとりになっちゃう。寂しいだろ」

 真顔で言う。麗しき友情というより、単なる寂しんぼうのようだった。

 

カンポン・スララウで最も大きな建物である学校、その奥にはメコン河とラオスが見える
こちらはカンポン・スララウで食べたランチ。丸ナスと豚肉の煮物、サラダ。コメはいくらでもあるから好きなだけ食えとボールで出てきた