文と写真・室橋裕和

メコン河の広大な中洲に無数の島が浮かぶシーパンドン。「4000の島々」という意味の地だ。そのカンボジア側から観光ルートを無視してドローカルエリアを突っ切り、僕はラオスへと入国した。今度はラオス側シーパンドンを旅する。

 

大自然の中に俗なる安宿街があった

 四方をメコン河に囲まれた、中州の島なのである。密林が生い茂り、濃密な緑の匂いとむんむんたる湿度に包まれた自然の楽園のはずである。近くにはこのメコン河が岩場にぶつかり崩れ落ちる、東南アジア最大の瀑布もあれば、河イルカの姿を見ることもある。ナショジオの世界なんである。

 が、島の外周部分にはコ汚いゲストハウスとか、トムソーヤの小屋みたいなバーがびっしりと立ち並び、メコンの風情をブチ壊すレゲエなんかが流れているのであった。上半身裸の白人どもがビオラオの瓶をワシつかみにしてイキッて練り歩く。影響を受けた島の小僧も生意気にドレッドなんかにしているが、ちっとも似合わない。土産物屋まであるが、その並んでる雑貨タイのものやんけ。

 そこらの食堂に入ってみれば白人ツーリストメシの定番バナナパンケーキやらピザやらハンバーガーが並ぶが、当然ながらうまいわけはない。ラオス料理も申し訳程度にメニューに載っていたからラープ(ひき肉のサラダ)を頼んでみたが、スパイシーさゼロで味気なかった。ラオス料理に欠かせないカオニャオ(もち米)は置いてないという。

 例えて言うなら「島の中のカオサン」であった。タイ・バンコクの安宿街カオサンロードのミニチュアが、このデッド島の一角に形成されている。おかげでWi-fiはビンビンだしキンキンに冷えたビールにもありつけるのだが、やはり疑問は渦巻く。メコンのど真ん中まで来てカオサンスタイルもないだろう。ついさっきまでカンボジアからラオスへと、外国人観光客皆無なローカル世界を旅してきたから、なおさらそう思えてしまうのだ。

 

シーズンともなれば欧米人バックパッカーでデッド島は大混雑する
デッド島には欧米人の好む旅行インフラはだいたい揃っている