メコンをぐるり回って目指すはスタートのあの村

 もっと土地の暮らしとか見たらどうかねキミたち……と僕はバイクにうちまたがった。デッド島でハバを効かせているフランス人経営のレンタルショップで借りたバイクであることがやや悔しいが、島の突端からときどき発着しているボートに乗り込む。タタミ8畳くらいのイカダにエンジンをつけたような形状で、バイクを搭載してメコンを渡れるのである。

 ラオス語で「4000の島々」を意味するシーパンドン。ラオス側では観光開発が進み、デッド島のようなところも出てきているが、まだまだ手つかずの自然が残っている。それに、観光とは無縁の小さな村だってたくさんあるのだ。僕はそういうところが見たかった。

 とはいえ、せっかく来たのだ。いちおう定番も押さえておかねばなるまい。まずはコン島にたたずむフランス軍のつくった橋梁であるとか、放置された鉄道車両なんかも見物する。そして島から本土に渡り、東南アジア最大級のコーンパペーンの滝にやってくると、それは横に数百メートル広がる巨大なカーテンだった。あのゆったりとした静かなるメコンが、ここでは別の生物のように轟音を伴い、まさに怒涛のように流れ落ちていく。

 かつてフランス軍は植民地としたラオスからカンボジアに、鉄道を通そうとしたのだ。しかし、この滝に代表されるシーパンドンの起伏と、複雑な地形、あまりの島の多さに工事を中断、放棄した。政治や軍事ではフランスに手も足も出なかったラオスだが、その地勢と自然とで植民地軍にひと泡吹かせたというわけだ。

 その当時からもしかしてあまり変わっていないのではという光景が、シーパンドンには広がる。メコンで水を浴びる水牛の群れ、河岸で遊ぶ子供たち、沖合いでは小さながなにやら網を手繰っている。そんな景色を見ながら、メコンに沿ってバイクで本土側を北上していく。

 国土を南北に貫く国道13号線を外れていくと、舗装は切れて赤いダートとなる。目の細かい埃が舞う。スピードを落として慎重に走る。

 目的地は、カマオ島だ。先端に、小さな集落がある。そこからメコンを挟んだ対岸には、この旅でまず訪れた村が見えるはずだ。カンボジアのカンポン・スララウである。カマオ島は国境の島でもある。カンボジアから始まったシーパンドンの旅。メコンをぐるりと回って、今度はスタート地点をラオス側から見る……ぜひ、やってみたかったのだ。

 

コーンパペーンの滝をぼけっと見つめていたのはみんな地元のおっさんだった。奔流と大音響は人を哲学者にするのか
フランス軍の残した鉄道車両はマニアにとってはたまらないものなのかもしれない