11月に入り、欧州各国で新型コロナの感染者数の拡大が再び懸念されるようになってきた。去年も新規感染者・死亡者がこの時期から急激に増えたことを思い出す。ワクチン接種が進んだイタリアでは、昨年の同時期と比べると新規感染者数・死亡者数とも圧倒的に少なくなってはいるが、それでもイギリス、ドイツ、オランダが相次いでクリスマスシーズンのロックダウンを視野に入れているとなると、やはり気が気ではない。

 

 昨年のクリスマス休暇中、イタリアは全土で二度目のロックダウンを決行した。友達はもとより、家族とも離れ離れでクリスマスと新年を迎えた人々が、「今年こそみんな一緒にクリスマスを祝いたい」と願うのは当然の成り行きかもしれない。そのせいかどうかは知らないが、今年は11月になった途端、ローマの街が一気にクリスマスモードに突入した。例年だと11月下旬から始まるクリスマス商戦も、今年はハロウイーンの終わりを待たずにスタートしている。

 

 先日、久しぶりにヴァチカンのサン・ピエトロ広場を訪れた。1年前にここへ来た時、初めて目にした空っぽの巨大な広場に衝撃を受けたことを思い出す。今、目の前には大勢のツーリストが広場を半周するように行列を作っていて、見慣れた光景にひとまずホッと胸をなでおろした。
 

 去年はことあるごとにこの祈りの場の光景を目にしたのだが、世界中から集った巡礼者で埋め尽くされているのが当たり前だった広場に老齢のローマ法王がポツンと一人佇んで祈りを捧げる姿は、コロナ禍の悲惨さと人々の痛み、哀しみ、絶望、不安を象徴しているように見えた。恒例の「プレゼピオ」も去年はシンプルかつ質素なもので、見学者もまばらな閑散とした広場には、なんとも言葉にできない哀愁が漂っていた。
 今年のサン・ピエトロ広場では、例年より一足早くクリスマスの準備が始まっていた。広場中央にあるオベリスクの前には大きな足場が組まれ、プレゼピオを飾る特大ステージの設営が着々と進んでいる。このステージの大きさからすると、今年のプレゼピオはかなり大きく、凝ったものになるに違いないと想像できた。その脇にはクリスマスツリーを設置する土台も用意され、毎年世界各地から選ばれてこの広場まで運ばれてくる一本のツリーの到着を待っている。後でニュースで知ったところによると、今年のプレゼピオははるばるペルーのアンデス山間の村から運ばれてくるらしい。ペルーのワンカベリカ県の5人のアーティストによる等身大の聖家族を含め、30のパーツからなる壮大なプレゼピオはそれぞれが当地の民族衣装をまとっている、と知ってお披露目の日がますます楽しみになってきた。その脇に置かれる今年のツリーは、北イタリアのトレンティーノ地方から高さ28mの天然木が運ばれてくるそうだ。昨年から続くコロナ禍の混乱によって人々が感じている不安や喪失感を少しでも払拭できるクリスマスになって欲しい。人々の願いと祈りが込められたプレゼピオとツリーは、12月10日の夕方、この広場に登場する。

 

ツーリストの行列が戻ってきたサン・ピエトロ広場。去年のクリスマスはこの広場が空っぽの状態だった
30のパーツから成る等身大のプレゼピオが置かれる特大ステージ。例年より早めに準備が進められていることを考えると、かなり凝った趣向が凝らされているのではと期待できる。
プレゼピオの脇にあるツリーが置かれるスペース。早くも準備が整い、アルプスから運ばれてくるツリーの到着を待ちかねている。