文と写真・室橋裕和

いよいよパンデミックとなった。コロナウイルスはグローバル化した社会システムに乗って広がり、世界中で無数の感染者と死者を出し、なお収まる気配がない。そこで各国は、被害を少しでも食い止めるために国境を閉じ、ビザの発給を停止しはじめた。グロ-バル化の針を一時的に逆行させることで、ウイルスの拡大を防ごうとしている。旅人にとって極めて厳しいこの状況、いったいいつまで続くのだろうか。

 

■日本人の行けない国が増えていく 

 世界中で、国境が閉ざされていく。

 コロナウイルスの感染拡大を食い止めるためだ。どの国も、他国からの入国を制限、あるいは全面的に禁止しはじめた。とりわけ感染者の多い中国韓国、イラン、イタリアスペイン、そして日本などは、世界的汚染国と見なされてしまっている。こうした国々から自国を守るため、入国を規制するようになったのだ。

 バックパッカーになじみの国でいえば、まずインドがいちはやく日本を含む汚染国に対してビザの発給を停止。現在発行中のビザも無効にすると宣言し、インド旅行中の人々は一時期、だいぶ混乱した(すでに現地滞在中のビザは対象外とすぐにわかったが)。

 モンゴルは日本人(過去2週間以内に日本に滞在していたすべての人)の入国が禁ぜられ、韓国と中国は日本人に対するビザ免除措置が停止。日々刻刻と、日本人が渡航できる国が消えていった。

 さらにマレーシアはすべての外国人の入国を禁止すると発表。ネパールもアライバルビザの発給を停止、フランスやカナダも自国民と一部の国以外の外国人の入国を禁止した。

 世界地図が毎日、黒く塗りつぶされていくような感覚だった。あれほどに近かった世界が、いまこんなにも遠い。

 

タイ=マレーシア国境スンガイコーロク。ここも3月末まで閉鎖、外国人は入国できない

■国境マニアの腕の見せどころか? 

「入国した外国人はホテルなどで14日間の隔離を義務づける」という国も多い。つまり短期の旅行は事実上不可能だ。バックパッカーたちの拠点国タイは、日本人に対して「14日間の自主的な隔離」を要請しており義務ではないとしているけれど、こう言われたらやはり堂々と旅するのは憚られる。ふだんは明るく、細かいことはマイペンライ(気にしない)のタイ人が、マスク姿で沈み込みナーバスになっているのだ。もう旅をしようという雰囲気ではない。

 ほんの少し前まで、2月末か3月上旬頃までは、僕と同類の越境マニアたちは、コロナから挑戦状を叩きつけられたかのように気炎を吐いていた。

「利用者がいなくなって航空券が叩き売りされている。99円の西安便があるぞ」

「いま日本人が行ける国をルーティングして、いかに陸路だけで旅するか」

空港は厳しい検疫や過去滞在国のチェックがあるけど、陸路国境はどうなんだ」

 なんて、コロナ禍エクストリーム旅行を目論むチャレンジャーたちが、この緊急時にあれあこれやとアイデアを練っていたのである。

「ふだんはビザ免除されていて入国スタンプしかもらえない中国や韓国も、いまはビザを取らないと入れない。でもパンデミックが収まれば、いずれ制限は解除されて元通りになるはず。つまりいまなら、コロナ期間限定の超レアビザがゲットできる!」というツイートには、僕もソソされた。なるほど、そりゃ確かにお宝だ……と思ったのだが、ふだんの仕事に加えてアジア各国のコロナ情勢の記事を書いて書いて書きまくる日々がいまも続いており、残念ながらマニアの不謹慎な野望は果たせないでいる。

 

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