文/光瀬憲子

 

■夜市ごはん

 初めて台湾を旅する人がかならず訪れる場所のひとつに夜市がある。毎晩屋台がずらりと並び、多彩なB級グルメが集まるナイトマーケットは魅力的だ。

 ただ、台湾人が普段どうやって夜市を利用しているのかはあまり知られていないかもしれない。今回は台湾人たちに人気のある屋台フードをピックアップしながら、地元の人々がどうやって夜市を楽しんでいるのかを見ていきたい。

台北の士林夜市のイカあんかけ。鰹節のダシとスパイスの香りが食欲をそそる
士林夜市の地下フードコート。どの店にもイカあんかけがある。週末は家族連れでにぎわう

■食べ歩きにちょうどいい量

 日本人にとって夜市は観光名所だが、台湾人にとっては気軽に利用できるフードコートのようなところだ。夜市に並ぶ店には、移動できる屋台と固定店舗の二種類があるが、1店につき1〜2種類の料理だけを扱うものが多い。

 たとえば蚵仔煎(オアジェン/牡蠣の卵焼き)とスープだけを扱う屋台、臭豆腐専門の店、腸詰めだけを販売する屋台など。どれもボリュームが小さめで食べ歩きにはもってこいだが、一品ではしっかり夕食を食べた気になれないのも事実だ。台湾人にとって、夜市は「軽食」を食べるところ。1つの屋台で1つの料理を食べるだけでは、台湾人の胃袋は満たされない。台湾人は日本人よりもずっと胃袋が大きいというのが私の持論だ。台湾で食べ歩きの取材をしていると、小柄な女性でも大盛りの牛肉麵と付け合せの小皿をランチにぺろりと平らげたりしている。

 だから、夜市フードは夕方のおやつだったり、夕食後の夜食だったりと、あくまでも小腹満たし用だ。夜市でしっかり夕食を食べようとすると、数軒はしごすることになる。私が台湾に住んでいた頃、夜市で蚵仔煎を食べるのが好きだったが、蚵仔煎の屋台に座りながら別の屋台で買ってきた臭豆腐を広げる、なんてこともよくやっていた。よほど長居をしない限り、他店の飲食物を持ち込んでもうるさいことを言わないのが夜市のいいところだ。