文・写真/サラーム海上

 

■リスボンで最初の食事、どこで何を食べようか

 

 2021年10月24日正午前、リスボン国際空港からウーバータクシーに乗った。9月終わりの東京のような気候なので、長袖のセーターを脱ぎ、Tシャツだけになってちょうど良い。空港はリスボン市の北西に位置し、パリのシャンゼリゼ通りを真似したとされるリベルダーデ通りにあるホテルまでたったの20分で到着した。リスボンの人口は約50万人、東京と比べるとかなりこじんまりしている。

 チェックインを済ませ、部屋に入ると長時間の移動のせいで、さすがに疲れはてていた。取り急ぎ荷物を広げ、シャワーを浴び、冷房をギンギンにかけてベッドで一休みする。そのまま昼寝しても良いが、機内食もラウンジの食事もあえて抜いていたので、お腹がグーっと鳴った。

 さて、どこに食べに行こうか? と言っても今日は日曜日だ。日曜日にゴーストタウン状態のヨーロッパの町は珍しくない。実際、空港からホテルまでの道は多くの店やオフィスが閉まっていた。宿のレセプションでその旨尋ねると、リベルダーデ通りはオフィス街でもあるので日曜は閉まっているが、南に下った町の中心地、シアードやバイシャは多くの店が開いているとのこと。それでは早速市内散歩に出かけるとするか。空っぽのトートバッグを肩にかけ、カメラだけ持って町に出た。

 リスボンはテージョ川に面した幾つもの丘とその間の低地からなる町。リベルダーデ大通りはその名も「低地」を意味する繁華街「バイシャ」の北側にあり、東西は丘に挟まれている。宿から南西方向を目指し、西側の丘バイロ・アルトへと登り、高台にある高級繁華街シアードを経由して、テージョ川沿いのカイス・ド・ソドレ駅まで歩くことにした。

 とまあ、勝手知ったる町のように書いてしまったが、僕はポルトガルは1996年8月に一度だけ訪れたことがあるだけだった。ヨーロッパからモロッコへと抜けるバックパック旅行中にリスボンに4日、それから南部の町アルガルヴェに3日滞在した。なのでリスボンの基本的な地理は覚えていたが、当時どこをどう歩いて、何を見たのかはすでに記憶の外だ。

 それでも、イワシの炭火焼きやコジード・ポルトゲーザ(肉おでん)、アロシュ・ド・マリスコス(海鮮雑炊)など、その時食べたいくつかのポルトガル料理だけは鮮烈に覚えていて、帰国後に自分なりに味を再現したこともあった。なので、今回25年ぶりにポルトガルを訪れることとなり、当時食べたり、その後、東京のポルトガル料理店で食べた料理を改めて現地で食べるのが、本来の目的であるWOMEXの取材と同じくらい、自分の中では重要なミッションとなっていた。出発前にガイドブックやポルトガル料理のエッセイ本を読みあさり、食べるべき料理はTo Doアプリにリストアップしておいた。

 そうして到着したリスボンで最初に何から食べようか? 蛸ご飯? 海鮮雑炊? ポルトガル名産の塩漬け鱈バカリャウ? いや、今、一番食べたいもの、心から欲しているものから食べるのが良いだろう。今回ポルトガルには9泊するため、目の前には無限の時間や機会が広がっているように思える。だが、否! 全ての料理は一期一会だ。今日を逃すと明日はないかもしれない。そう考えると、最初に食べるべきもの、そのちょっとゲテモノ的(?)なシルエットがありありと脳裏に浮かんできた。よし! 行き先は決まった!

カイス・ド・ソドレ駅近くのアンブレラストリート
以前、かすかな記憶と都内のポルトガル料理店でいただいたものを元に舌コピーして作ったポルトガル料理
サラームのTo Eat in Portugal リスト。だいぶ食べたが、食べられなかったものも残っている! それは来年!