文と写真/カワノアユミ

 

日本には様々な横丁がある。表通りから少し逸れた道に入ると並ぶ小さな看板の数々。ノスタルジックな赤ちょうちんやスナックが並ぶ”昭和横丁”から、バブル崩壊以降は寂れた趣の”平成横丁”。今どきの若者に人気の渋谷や恵比寿にある”令和横丁”まで、横丁にはその街の歴史が詰まっている。その空気に惹きつけられるかのように、今日も日本のどこかの横丁で呑んだくれる女が1人……。これは、元底辺キャバ嬢カワノアユミが織りなす横丁探訪記である。。

 

京都流横丁? リド飲食街とは

 

 仕事で京都にやってきた。仕事といっても写真を撮るのがメインで後は自由時間。さらに、ホテルで執筆するつもりだったのだがパソコンの電源ケーブルを忘れるというポンコツぶり……。そんな自分に呆れつつ帰路につこうと向かった京都駅で、ふと一杯飲みたくなったのだ。

 

 「そういえば、近くによい感じの会館があるって聞いたな……」

 前回、京都在住の知り合いに京都駅近くに「リド飲食街」という会館があることを聞いていた。京都には裏道に飲み屋が密集している、いわゆる横丁は少ないのだが、1つの建物に飲み屋が入っている会館と呼ばれる昔ながらの飲食街がいくつか存在する。前回、訪れた大宮の新宿会館もその1つだ。他にも西院の折鶴会館、四条富小路にある四富会館、その2つと並んで有名なのがリド飲食街だ。

 

 午後4時、リド飲食街に行くとまだ開店前のようだった。小腹が空いていたので先に夕飯をとることに。ラーメンの激戦区でもある京都。中でも京都駅近くにある「本家 第一旭 たかばし本店」は行列が絶えない人気店だ。ランチ時や夕飯時だと1時間は待つのだが、平日の夕方ということもありすぐに入ることができた。この日はチャーシューが入っていない「肉なしラーメン」を注文。透明感のある京風の豚骨醤油ラーメンにツルツルの中細麺がよく合う。関東ではあまり馴染みのない九条ネギは柔らかな甘みで食べごたえがある。あっという間に平らげてしまった。

 

「本家 第一旭 たかばし本店」の肉なしラーメン

 お腹もいっぱいになって午後5時、ふたたびリド飲食街に戻る。周辺には京都タワーや商業施設が建つ烏丸通り。そのすぐ脇道に入ると突然、現れる2階建の長屋。昭和の名残がある建物内には、串カツ屋やおばんざい屋など様々なジャンルの飲食店が軒を連ねている。

 

 まだ半分ほどの店が開いていなかったが、中から話し声が聞こえてきた飲み屋に入ることにした。横開きの扉を開けると長いカウンターと椅子が横一列に並べられていた。外から見ると立ち呑みにも見えるのだが、どうやら館内すべての飲み屋が同じカウンターのつくりになっているらしい。さっそく席に座り、焼酎の烏龍茶割りを注文した。

 

 「1人で来られたんですか?」

 座っていた男性客に話しかけられた。てっきり地元の人だと思っていたが、東京から出張で来てるという。これから、車で東京に戻るので「今日は飲めないんですよね」と言って烏龍茶を飲んでいた。聞くと、リド飲食街に来るのは初めてで京都駅周辺で1人でも入りやすい店をタクシー運転手に聞いたところオススメされたという。県外からの客も多いんだなと思いつつ、ママに話を聞いてみた。

 「10月22日に京都市の時短営業は解除されたんやけれど、地元の人はまだ戻って来ないんよ。元々、近くに勤めるサラリーマンのお客さんが多かったんやけどね。京都は狭いからねぇ、すぐに飲み歩いて噂になっても敵わんというお客さんが多いみたい。今は県外からの出張のお客さんのほうがよう来てくれはりますね」

 

 紅葉が見頃となった京都では県外からの観光客が戻ってきており、木屋町や先斗町では賑わいを見せていた。しかし、ビジネスマンが多い京都駅周辺の客足は戻っておらず、この日も連休前の週末にしては少し寂しい雰囲気だ。「インバウンドには外国人観光客もよく来てくれたんやけどね」とママは言う。海外のガイドブックに載っているのだろうか。英語表記のメニューは一切ないが、外国人観光客は勧めた焼酎も食事もずべて美味しそうに食べてくれたという。ただし、らっきょうをのぞいては。

 





リド飲食街