文/光瀬憲子

 

 豚肉大国の台湾の人々は牛肉やガチョウ肉をありがたがると書いたが、台湾人がハレの日に食べたがるのは肉より海鮮である。大人数でテーブルを囲む日は、正月や大晦日から忘年会、結婚式などに至るまで魚が欠かせない。

 特に正月。台湾の人たちは「年年有余」(毎年あり余るほどの富がある)ことを願い、「余(ユー)」と同じ発音の「魚(ユー)」を好んで食べる。今回は台湾人のハレの日の会食風景を覗いてみたい。

熱炒(海鮮炒め)の専門店の様子。右のブーツ姿の女性はビール会社のコンパニオン

■海鮮を求める理由

 島国、台湾であれば、日本に負けず劣らず海鮮大国だろうと想像しがちだが、台湾人にとって海鮮は貴重な食材であり、ゆえに大事な日に食べる特別な料理とされてきた。

 理由のひとつは、供給の安定した肉類に比べると、漁業は天候に左右されやすく不安定なことが要因。台風の被害に遭いやすい台湾では漁業はラクではない。

 もうひとつは、亜熱帯の台湾では魚介類の保存がきかないことだ。どの家庭にも冷蔵庫がある今は問題ないが、かつては生で魚を食べるなんてもってのほかだったし、1年を通して気温が高い台湾では長らく魚の販売や保存が難しかった。その名残か、今でも海鮮にはどの肉よりも高い値がつき、大晦日や正月にテーブルの中央に据えられるのは大きな魚の姿煮や姿揚げである。

 特にマナガツオは縁起物とされていて、正月前後には驚くほど高値がつく。1匹1000元(約4000円)になることも珍しくない。

薬味をたっぷり使った黄魚(キグチ)の姿蒸し。海鮮専門店の売れ筋料理だ
台湾の正月に欠かせないマナガツオ。市場やスーパーで買い、大晦日の食卓に並べるのが一般的。正月には値段が高騰する