わたしにとって旅先でワインを飲むことは宝物が増えていく感覚に似ている。
 酔い思い出は鮮明でキラキラしているし、同じワインを飲むと旅の記憶を呼び覚ます。

 

 移住した旧友に唐突に会いに行った沖縄。

 前日の那覇はしご酒のダメージが抜けきらぬまま、本日の酒を調達しに那覇から車で向かったのは、読谷村にあるナチュラルワイン専門店『un deux trois(アン ドゥ トロア)』。カジュアルで心地がいい店内にはズラリとセレクトされたヴァンナチュールが並ぶ。

「いま暑いけど夜は冷えるから、シュワっとしたものと少しボリュームがあるものが飲みたい」と、オーナーさんに相談して何本か提案していただいた。

 ワインのプロがいるお店では、その日の気分を伝えて期待を上回る1本を提案してもらうのが、飲むまでのワクワク感も含めて楽しい。

 作り手さんの物語から味わいまで丁寧に説明してもらい、オーナーさんのシズル感溢れる言葉に惹かれた、オーストラリアの『ヒッピー・フリップ 2018』とフランス・ロワール地方の『サンセール・ブランスケヴェルドラ2015』の2本をお持ち帰りすることにした。

 こちらでは店内でグラスワインを味わうことができるのだが、車できているので羨ましげな目で見ることしかできず、「近所にあれば通うのに…」と後ろ髪を引かれながら店をあとにした。

 

 気持ちを切り替え、頭から音符を飛ばしながら今日の宿へ。

 『エアビー』で一棟借りした海が見える家のキッチンで、都屋漁港や道の駅で揃えた食材を使い友人と簡単な料理を作る。「あ〜早く飲みたいね!」と口々に漏らしながらの準備は、否が応でも開栓への気持ちを高めていく。

 食卓の準備が整い、乾杯の音頭と共にまずは『ヒッピー・フリップ 2018』を開栓。
 待ってました!と喉を鳴らして飲むと、軽快な微発泡が一日動き回って乾いた身体を駆け抜けていく。外に生えていた月桃葉で包んだアグー豚にあわせると、脂を流して肉の味を高めてくれる。「うーまーいー」と思わず天井を仰ぐ。ゴクゴク飲めてしまうので気づいたら早々に瓶は空。

 「えーい!もう一本!」と続いて『サンセール・ブランスケヴェルドラ2015』をグラスに注ぐ。美しい琥珀色のワインは、ボリュームある口あたりとミネラル感があり、すごく奥深い味。宵のうちに昔話を笑い語らいながら飲むのにぴったりなワインだった。

 

 この日の気分に大正解なセレクトに感謝しつつ、旧友とワインの味を共有して、それが大切な思い出になっていく。旅先というのも美味しさが増すスパイスだ。

 あぁ、書いているうちにまた旅に出たくなってきた。宝物を増やしに美味しいワインを飲みに行こう、すぐ行こう。

 

大きな窓が開放的な読谷本店。「un deux trois 那覇店」が2020年11月にオープンしたそうなので、次回沖縄へ行く際は足を運びたい。
セレクトしていただいた『ヒッピー・フリップ 2018』と『サンセール・ブランスケヴェルドラ2015』。
宿からの景色。夜に空いっぱいの星を見ながら飲むワイン、控えめに言っても最高では。

●リレーエッセイ【前の記事】はコチラから

ワイン遍歴30年、積算飲酒量を気にしながらも、現在一番飲んでいるのはコスパが良すぎるカクヤスのワンコインワイン【リレーエッセイ「ワイン編」vol. 5】サバラン昭子