メゼとサラダをゆっくりと
蛸のサラダ、蛸に対するオブセッションを持つ僕は避けては通れない。吸盤が自然に落ちるほど柔らかく下ごしらえした蛸の足をぶつ切りにして、イタリアンパセリ、紫玉ねぎ、青唐辛子、キュウリのピクルスとともにワインビネガーとオリーブオイルでマリネしただけだが、やはりエーゲ海の蛸は美味い! ミネラルの強い白ワインによくマッチする!

そして謎のメゼ、アラチャトゥの風は、茹でたアーティチョークの芯、青リンゴ、スペアミントのペーストだった。モソモソしたアーティチョークにシャキシャキの青リンゴ、そして爽やかなスペアミント。確かに口の中に風が通るような、風の町アラチャトゥらしい料理だ。これは美味い!美味すぎる! 自分で作るのも簡単そうだが、日本ではアーティチョークがなかなか安くは手に入らない。試しに菊芋あたりで代用してみようか?



メゼとサラダをゆっくりいただき、8時を過ぎてから、蛸足の炭火焼きが運ばれてきた。蛸を前菜と同じように柔らかく下ごしらえしてから、炭火で焼いて旨味を閉じ込めただけ。そこにマスタードとバルサミコ酢の甘酸っぱいソースと溶かしバター。たったそれだけなのにやはり美味い! 蛸は表面は炭火でカリカリだが、身はスッとナイフが入るほど柔らかい。日本に帰ったら、三崎港まで行って活きタコを仕入れて、丁寧に下ごしらえしてから、庭で七輪を使って炭火焼きにして再現したいなあ。

食後にお店からのサービスでイチゴをのせたタヒーニのアイスクリームにざくろ果汁濃縮ソースかけとチャイをいただいた。
人気店ファヴァでいただいたトルコのエーゲ海沿岸料理は、イスタンブルの料理よりも野菜やハーブを活かしたものが多く、シンプルでギリシャ料理に近いように思えた。
お店を出ると午後9時。この時間になってはじめて夕日が沈み、辺りが暗くなり始めた。腹ごなしに宿まで20分歩いて帰るとしよう。翌朝は別の人気レストラン『エンギナレ』でエーゲ海料理を習うことになっている。

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