12畳ほどのキッチンはエンギナレと同じく、三方の壁が上段が棚で、腰の高さにシンクやコンロ、オーブンなどが設置されていた。そしてキッチンの中央には大きな四角い作業台兼テーブルが陣取っていた。

 その中央テーブルには17種類のエーゲ海料理が大皿に美しく盛り付けられて並んでいた。お皿の下にはスペーサーをかませて、中央の大皿が一回り高く、高低差を付けて配置されている。

 そこに並んだ料理は、僕が今までの30回以上のトルコ取材を通じて一度も目にしたことのなかったようなエーゲ海料理ばかり!

 入り口側のテーブルの端の真ん中に一段高く鎮座していたのはハーブとチーズのかき揚げ、またはお焼きにあたる①ミュジュヴェルだ。午前中にエンギナレで、エーゲ海料理の基本は青ネギやイタリアンパセリなどのハーブを大量に刻むことから始まるのを身体で学んだ。このミュジュヴェルはまさにハーブたっぷりのエーゲ海料理だ。しかし、出来るたけ多くの種類の料理を食べたいので、お腹にたまる揚げ物はスキップしよう。

 ①ミュジュヴェルから時計回りに料理を紹介しよう。②セイヨウイラクサの葉を黒オリーブとともにオリーブオイルで炒めたサラダ。③続いてエーゲ海産の小さくて甘いキュウリとミント、ブルグルのサラダ。
 ④次はエンギナレのミライさんから習った栗カボチャのオーブン焼きのカバック・シンコンタ。⑤アッケシソウとアーティチョークと赤パプリカのオリーブオイル煮。そして、大きなテーブルの中央は⑥スベリヒユとイチゴと胡桃のサラダ。多肉植物のアッケシソウやスベリヒユは日本では雑草扱いされてきたが、最近は有機野菜の専門店や地方の農家直売店や道の駅などで目にする機会が増えた。
 ⑦続いてはナスの薄切りにチーズやハーブ、カボチャの種などをたっぷりのせたオーブン焼き。⑧ミニトマトのサラダ。そして、アラチャトゥではどのお店でも目にした⑨ズッキーニの花のご飯づめ、カバック・チチェイー・ドルマスも大皿いっぱいに盛り付けられている。

 

①ハーブとチーズのミュジュヴェル

⑧ミニトマトのサラダ

⑨夏のアラチャトゥの定番、ズッキーニの花のご飯づめ、カバック・チチェイー・ドルマス

キッチンの奥から入り口方向に撮影

 ⑩イスタンブルのメイハネでおなじみのサヤインゲンのオリーブオイル煮、ターゼ・ファスリエ。⑪テーブルの一番奥の中央にはズッキーニの花にフレッシュチーズを詰めただけのものが並んでいた。聞くと注文を受けてから、衣を付けて油で揚げてフリットにすると言う。

 ⑫テーブルの一番奥の角にはほうれん草と玉ねぎにチーズをのせて焼いたグラタン。時計回りに手前に戻ると、⑬お店の名前にもなっているアスマ・ヤプラウ・サルマス。ハーブとお米を塩漬けのブドウの葉で巻いて、オリーブオイルとレモン汁で煮たもの。これも昼のエンギナレと同じく真っ赤なサワーチェリーと一緒に煮込んであり、緑と赤のコントラストが美しい。⑭その手前の白地に緑色のお皿は炒めたほうれん草と胡桃をヨーグルトと混ぜ込んだサラダ。⑮更にエーゲ海のハーブをたっぷり混ぜ込んだブルグルのピラフ。⑯これも初めて見る料理だが、小さなオクラと小さめのサワーチェリーのトマト煮込み。そして手前左角に戻り、⑰レンズ豆のペースト、ファヴァである。テーブルにはこの全17品が並んでいたが、キッチンの壁の作業台の上には更に⑱オーブンで焼いた小さな水餃子のマントゥも天パンに入ったまま置かれていた。この他、展示はないが、肉料理やスープなども作ってくれるそうだ。

 

⑰レンズ豆のペースト、ファヴァ

⑱茹でずに天パンに並べてオーブンで焼いたマントゥ、水切りヨーグルトがたっぷり
君なら何を頼む?こんなの見ちゃったら、実際にこの店に来て、料理を口にするまで、アナタの心は二度と落ち着くことはないでしょう!

 とまあ、ここまで一気に説明したが、このときの僕は興奮しすぎて、何を注文すべきかわからなくなってしまった。そこでいったんキッチンから表に出て、深呼吸し、頭の中を整理してから、②、③、④、⑤、⑥、⑪、⑬、⑯、⑱の9品を頼んだ。3人で9品はさすがに多いかもしれないが、基本的に野菜中心なのでなんとかなるだろう。