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風光明媚なタッペイナーの道

 メラーノの教会の裏山から、お隣のチロル村まで約4kmに渡って続く散歩道があると聞いて足を伸ばしてみることにした。ツーリスト・インフォメーションのお姉さんの話では、「軽い散歩コースよ。スニーカーで全然オッケー!1時間半ぐらいでチロルに着くわ」とのことだったので、気楽な気持ちで出かけた。

 教会の裏にある石の階段を登りきると、メラーノの旧市街が一望できる。幸いお天気は上々、12月だというのにちょっと歩くと汗ばむくらい暖かい。オーストリア国境に近く、周囲は2000mを超える高い山々に囲まれているにも関わらず、道の崖側にはユーカリやマグノリア、様々な種類の竹、果ては南国のサボテンまで元気いっぱいに生い茂っていて、なかなか奇妙な眺めである。民家らしき山小屋風の建物があったり、葡萄の段々畑があったり、高い山々と渓谷のパノラマを眺望できたりと、バラエティに富んだ散歩コースだ。

 案内所のお姉さんが言った1時間半はとっくに過ぎたが、チロル村はまだ先。途中、カフェで渓谷のパノラマを楽しみつつシュトゥルーデルとエスプレッソでエネルギーを補給し、村へ向かって歩き続ける。

 



「タッペイナー・プロムナード」と呼ばれるハイキングコースは医者で植物学者のタッペイナー氏の発案で作られた。独特の気候環境により、地中海沿岸など暖かい地域特有の植物もすくすく育っている。

チロル城のクリスマス・イベント

 出発から2時間以上かかってようやくハイキングコースを脱出。「Tirolo」の標識を見つけ、やっとチロル村に着いたかと思いきや、村の中心の広場はまだ先だということが発覚した。コースの終点からアスファルトの道路脇の登り坂を歩くこと約20分、ようやく広場に辿り着いた時は息も切れ切れだった。そこで思い至ったのだが、案内所のお姉さんはしっかり地元・南チロルの人。彼女にとっての「軽い散歩道」は、私にとっては登山にも等しいのだということを最初に考慮しておくべきであった。広場でへたり込みそうになっていた時、軽快な鈴の音を鳴り響かせながら、美しいチロル風のデコレーションが施された馬車がやってきた。かわいい! 乗りたい!

「この馬車はどこまで行くの?」 羽のついたチロル帽をかぶった御者のお兄さんに尋ねると、「お城と広場を無料で往復してるんだよ。次の出発は30分後。でも大した距離じゃないから歩いた方が早く着くよ。お城ではもうじき音楽隊の演奏が始まるし、サンタクロースも来るから急いだ方がいいよ」。

 音楽隊、サンタクロースと聞いて心は決まった。馬車にも乗りたかったが、これは帰路のお楽しみにとっておくことにして、覚悟を決めると再び歩き始めた。

 

小さなアルプスの村のクリスマスを盛り上げていたチロル風の馬車。素朴な村のツリーは、街路樹のもみの木に付けられた生のリンゴと赤いリボン。

 チロル城へ到着。高い山と渓谷の真ん中に突き出た岩の上に建つお城は、遠くから眺めるととてもロマンティックな風貌で、おとぎ話に出て来るお城そのもの、と言ってもいい。きっとお城の中でもムード満点のイベントが繰り広げられているんだろうなぁ、と想像しつつ、頑丈な石造りの門をくぐった。

 出迎えてくれたのは、素朴なラッパのマーチ。人だかりをかき分けて進んでみると、羊飼いのような衣装をまとったおっさんらの楽隊が不思議な形のラッパを吹き鳴らしていた。パッパラパッパラパー。私が想像していたロマンティックなクリスマス音楽には程遠いにぎやかさではあるが、チロルのムードは満点なので良しとしよう。

 



崖の上に浮き上がるように建つチロル城。周囲の自然とのハーモニーがとても美しい。チロルの民族衣装に身を包んだラッパ隊。