時の過ぎる速度が年々速くなっているように感じるが、今年もあっという間にクリスマスの季節がやってきてしまった。温暖化の影響で秋をじっくり楽しむこともできないまま、街は一気に年末の喧騒に突入。カレンダーは12月でも今年のローマはまだまだ気温が高く、クリスマスと言われてもピンと来ない。そこで、季節感をたっぷり満喫できる北イタリアまで足を伸ばすことにした。オーストリアとの国境にあるトレンティーノ・アルト・アディジェ州はイタリアにおけるクリスマス・マーケットのメッカで、11月末から1月初旬にかけては州内のどの街でもクリスマス・マーケットが開催されている。色とりどりのイルミネーションやにぎやかな露天商、郷土の味が楽しめる屋台が軒を連ね、街を歩くだけでもクリスマスムードをたっぷり満喫できる。

 今回は、ボルツァーノと並んでイタリア最大と謳われるトレントのクリスマス・マーケットと隣町ロヴェレートのクリスマス・マーケットをハシゴしてみることにした。それぞれの街の魅力とクリスマス・マーケットの楽しみ方を2回に渡ってご紹介しよう。

 

ルネッサンスの街並みが美しいトレントの旧市街
 

 トレンティーノ・アルト・アディジェ州の州都であるトレントの街は、ルネッサンスの時代にカトリック教会が開催した「トリエント公会議(宗教公会議)」が開催された街として有名である。1545年から1563年の間、数回に渡って開かれたこの会議は、マルティン・ルターの宗教改革運動の高まりを受けて当時の教皇パウロ3世によって開催された。その後のカトリック教会に大きな変革をもたらしたこの重要な会議の開催地としてトレント(ドイツ語でトリエント)の街が選ばれた理由は、ここが神聖ローマ帝国領の自由都市であったから。聖書の教義をもう一度見直し、カトリック教会のあるべき姿を模索するこの会議は、現在に至るまでカトリック・キリスト教に多大な影響をもたらしている。

 

   世界を揺るがす歴史的な会議が開催された街だけあり、トレントの旧市街には中世からルネッサンス、バロックの時代に至る素晴らしい建築群が残されている。中でも「街で一番美しい通り」として有名なのがドゥオーモ広場へと続くベレンツァーニ通りだ。フレスコ画で装飾された華麗なファサードを持つルネッサンス期の建物が並んでいる。バロック様式のサン・フランチェスコ・サヴェリオ(日本ではフランシスコ・ザビエルの名で知られる)教会を背に、ルネッサンスの美の結晶を鑑賞しながら歩く。ドゥオーモ広場に着くと、ここにも素晴らしい建築や彫刻が集っていた。背後に広がる雄大なドロミティの雪山とルネッサンス建築が見事に融け合い、心安らぐ優美な空間を作り出している。

 

 サヴェリオ教会からドゥオーモ広場へまっすぐ伸びたベレンツァーニ通り。両脇にルネッサンス期の美しい建築が軒を連ねている(上)。外壁に美しいフレスコ画が描かれた16世紀の建物。外気にさらされていることを考えると奇跡的な保存状態の良さ(中)。優雅なポーチを備えた建物もある(下)。
ドゥオーモ広場にもルネッサンス期の芸術的な建築物が集っている(上)。18世紀の彫刻ネプチューンの噴水と大聖堂に隣接した中世時代のプレトリオ宮殿の時計塔(下)。