歴史の現場を体感できる博物館と初期キリスト教聖堂

 

   マーケットでショッピングと食い倒れを堪能した後は、きらびやかなデコレーションで飾られた旧市街を散策する。絶好の散歩日和にも恵まれ、背後にそびえる山々の風景の中に溶け込んだルネッサンスの美しい街並みの中を歩くのはとても心地よく、飽きることがない。本当はここからトレントが誇る中世のブオンコンシーリオ城へ行くつもりだったのだが、あいにく休館日とあって断念し、代わりに街の歴史がわかる司教区博物館を見学することにした。

 

   ドゥオーモ広場のサン・ヴィジリオ大聖堂に隣接したプレトリオ宮殿の一角にある司教区博物館には、16世紀の宗教公会議の貴重な資料を始め、11世紀から19世紀に及ぶトレントと周辺地域の芸術・文化遺産が収蔵されている。歴史の教科書で見た記憶がある宗教公会議の絵画や歴代司教の法衣、宝物、タペストリーなど、見応えのある展示を見学しながらコースを進むと、突然、古い石造りの通路に出た。トンネル状の通路からは、隣接したサン・ヴィジリオ大聖堂の主祭壇を真下に見ることができる。一瞬、さっき見たばかりの「宗教公会議」の絵画の中に入り込んだような気分に陥った。カトリック教会にとって重要な転機となった歴史的な宗教公会議は、まさにここで開かれたのだ。歴史の生々しい記憶に触れ、自然と厳粛な気持ちになる。

 

   博物館のチケット売り場で、「隣接する大聖堂の地下にある初期キリスト教の聖堂もぜひお見逃しなく」と言われたので、そちらも行ってみることにした。トレントのドゥオーモであるサン・ヴィジリオ大聖堂は、12〜13世紀にかけて建造されたロマネスク・ゴシック様式の重厚な教会で、その地下にローマ帝国末期の初期キリスト教聖堂が残っている。階段を降りて地下に行くと、そこには4世紀のキリスト教聖堂の祭壇とクリプタが残されていた。古代ローマ時代のモザイクや大理石彫刻が残る聖堂内には最新のVRゴーグルがセットされていて、これを着けて聖堂内を見渡すとまるで古代にタイムスリップしたかのような感覚に陥る。世界史に刻まれた歴史の現場に立ち、さらには最新テクノロジーで古代へのタイムスリップも体験できる機会にも恵まれ、予想以上に充実した1日を過ごすことができた。 

 

9世紀から13世紀にかけて、トレントの司教の住居であったプレトリオ宮殿。現在は司教区博物館となっている。カトリック教会において非常に重要な会議が行われたこの場所には、先の教皇ヨハネ・パウロ2世も公式訪問した(上)。歴史の教科書で見たような記憶がある「宗教公会議」の絵画(下)
博物館のコース内にある古いトンネルの通路(上)。この通路の右手にサン・ヴィジリオ大聖堂の主祭壇が見下ろせる(中)。荘厳な大聖堂の内部を上から見下ろすという貴重な体験ができる(下)。

 

博物館を出て、隣接する大聖堂へ。二重構造になっている聖堂内の一角に、地下の初期キリスト教聖堂への入口がある(上)。4世紀、古代ローマ帝国末期に建設された聖堂に足を踏み入れる。見学ルートには最新式VRゴーグルも置かれている(中)。古代ローマのモザイクが残る床(下)

 

★ MAP ★

 

<アクセス>

ローマからフレッチャアルジェントで直通約4時間。もしくはヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァから各駅電車で約1時間半。

 

<参考サイト>

トレント観光情報(英語)

https://www.discovertrento.it/home

トレンティーノ周辺観光情報(英語)

https://www.visittrentino.info/en

 

「ブーツの国の街角で」vol.74(2019.12)