今、横浜の隔離ホテル(検疫所の登録待機施設)の一室でこの原稿を書いている。今日で宿泊隔離も3日目、時差ぼけもようやく解消しつつある。イタリアも日本も感染状況が落ち着いていた11月の初めにチケットを購入した時は、まさかこんな事態に巻き込まれようとは夢にも思っていなかった。巷で話題となっているドキドキの「隔離ホテルガチャ」もリアルタイムで体験し、ようやくホテル暮らしにも慣れて、ホッと一息つける状態になった。入国から今日に至るまでの経緯を、詳しくご紹介していこう。

 

    12月17日の夜明け前に家を出て、ローマのフィウミチーノ空港からフランクフルトを経由して羽田空港に到着したのは18日の朝7時。寝ぼけ眼で飛行機を降りると、すぐに輪ゴムがついた緑色の長札を渡され、「手首に着けておいて下さい」と指示された。なにやら訳がわからぬまま、長札を手首からぶら下げて歩いて行くと、第一関門の書類チェックポイントが待っていた。到着ゲートから続く廊下にはしっかりと誘導マークが示されていて、道順に従って進むと要所要所にアクリル板で仕切られた机が並ぶフロアがあり、そこで必要な手続きを終えて次のフロアへ移動する仕組みになっている。
 最初にコロナ陰性証明書と隔離に関する誓約書、隔離期間中に利用するアプリのチェックがあり、次にそれぞれのアプリの作動状況のチェックと使用方法の説明などがある。ちょっと驚いたのは、こうしたチェックを担当している人のほとんどが若い中国人や韓国人だったことだ。一瞬、ここは本当に日本か?と思ってしまったほど、その割合は高かった。大学生のようにも見えるアジア人の元気な若者たちが、流暢な日本語で日本政府のアプリの使い方を教えてくれる。日本を離れて久しい日本人の私は、なんとも奇妙な感覚を覚えた。

 

出発国によって異なる施設隔離期間は、この長札の色で識別されるようになっている。イタリアは施設隔離6日間なのでこの緑色の札を付けるよう指示された。

 

 それらのチェックが済むと、いよいよコロナ検査がある。荷物を持って選挙の投票所のようなブースへ移動し、脇に貼られた梅干やレモンの写真を眺めながら唾を溜めて漏斗で小さなボトルの中へ。長時間のフライトの後で喉はカラカラ、なかなか唾が出てこない。梅干やレモンの写真にどれほどの効果があるのか疑問だったが、専門家の指示で作られたシステムなのだから、一応それなりの効果はあるのだろう。梅干の味がなかなか思い出せない私は苦労しつつ、10分ほどかけて規定量を採取し、ブースから出ようとした。するとすかさず、どこからか飛んできた中国人のお姉ちゃん係員(透明なフェイスマスク着用)に、「ダメ。足りない。ここまで入れてください」と厳しいダメ出しをされてしまった。再びブースへ戻り、梅干の写真と格闘しながらどうにかお姉ちゃんを満足させるだけの唾を吐き出し、ようやく次の関門に進むことができた。